研究課題/領域番号 |
26670077
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉岡 靖雄 大阪大学, 微生物病研究所, 特任准教授(常勤) (00392308)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノマテリアル / 免疫応答 / ワクチン |
研究実績の概要 |
申請者はこれまで、ナノマテリアルをワクチン抗原キャリアとして適用し、有効性の問題(体内への抗原送達等)を解決すると共に、ワクチンリスクの主原因となるIgE産生を制御し得る可能性を先駆けて見出した。本研究は、ナノマテリアルと抗原の動態を精査することで、「ナノマテリアルの物性」-「ナノマテリアル・抗原の細胞内・皮膚内動態」-「免疫応答」の連関を解析するものである。これまでに、粒子径70nmのナノシリカと抗原を混合し、皮膚に塗布した際、抗原特異的IgEが非常に強く誘導されることを見出してきた。さらに、IgEの上昇に伴い、抗原のチャンレンジによるアナフィラキシー応答が強く誘発されることを見出した。平成26年度には、抗原特異的IgEが増強されるメカニズム解明を試みた。その結果、ナノシリカと抗原を混合することで、ナノシリカと抗原が強く結合し、ナノシリカー抗原の複合体を形成することで凝集することが明らかとなった。さらに、凝集体の形成により、単独で存在する抗原量が著しく減少することが明らかとなった。ナノシリカー抗原の凝集体は、皮膚を通過しにくくなることから、皮膚を通過し得る抗原量は低下したこととなる。それにより、抗原特異的免疫応答が変化したものと考えられた。ナノシリカと凝集体を形成しない異なる抗原を用いた場合では、免疫応答が変化しないという事実もこの仮説を支持している。現在、単独の抗原量が低下すると、なぜ抗原特異的IgEの産生が増加するかについて、検討を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度には、当初の予定通り、ナノマテリアルと抗原の動態解析、特に、皮膚透過性を定量的に評価し、免疫応答との連関解析も推進できたことから、順調に進展していると考えられる。なお、本年度の成果を中心として、現在、論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、大きな問題もなく順調に進んでいることから、今後も、当初の予定通り研究を遂行する。具体的には、平成27年度には、「なぜ、ナノマテリアルと抗原を混合した後、皮膚に塗布すると、免疫応答が変化するのか?」という疑問について、平成26年度に得た、「抗原曝露量の低減」という観点から解析を進める予定である。即ち、低用量および高用量での抗原曝露が免疫応答にどのような影響を及ぼすかなどについて検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予想以上に研究が進展し、今年度に予定していた研究成果を早々に得たことから、使用額が当初の予定とは異なることとなった。また、前倒しで平成27年度予定の研究に着手することも考えたが、研究成果の論文投稿を最優先に考え、論文作製を行った。さらに、研究成果の学会発表も予定していたが、内容の重要性を鑑み、論文投稿後に成果発表することとして、当初予定していた学会発表も取りやめたため、使用額が当初の予定とは異なることとなった。なお、論文は投稿中である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には、当初の予定通りの検討を進めると共に、予定以上に詳細な検討を進めることができるものと考えており、その予算として、使用したいと考えている。また、研究成果について、学会発表を含め社会に発信する予定である。
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