研究課題
申請者はこれまで、ナノマテリアルをワクチン抗原キャリアとして適用し、有効性の問題(体内への抗原送達等)を解決すると共に、ワクチンリスクの主要因となるIgE産生を制御し得る可能性を先駆けて見出してきた。本研究では、ナノマテリアルと抗原の動態を精査することで、「ナノマテリアルの物性」-「細胞内・皮膚内動態」―「ワクチン効果・安全性」の三者連関情報の収集を図った。平成26年度には、1)ナノシリカと抗原を混合することで凝集体を形成すること、2)凝集体は皮膚を通過しにくいこと、3)単独の抗原量が低下する一方で、皮膚塗布により抗原特異的IgEの産生量が増大することを見出した。そこで平成27年度には、単独の抗原量が低下することで、なぜ、IgE産生が増大するかについてメカニズム解明を試みた。モデル抗原としてダニ抗原を用いて、濃度三点でマウス皮膚に塗布した結果、高容量塗布群で、皮膚局所の病態が最も悪化すると共に、抗原特異的IgG産生量も最も高かった。一方で、抗原特異的IgEの産生量は低用量塗布群で最も高く、さらに、抗原を静脈内投与した際のアナフィラキシー応答も最も顕著であった。以上の結果から、低用量塗布群で、高用量塗布群よりもアナフィラキシーショックへの感受性が亢進する現象は、低用量塗布群でIgGの産生が低いことに起因すると考えられた。即ち、ナノマテリアルと抗原の複合体をワクチンキャリアとして適用する場合、複合体の粒子径、複合体を形成していない抗原量などの物性を精査することが、IgEを誘導しないワクチンの設計に必要不可欠であることが示された。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
Clin Exp Allergy
巻: Feb 19 ページ: 1-34
10.1111/cea.12722
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