本研究では、血液型不適合肝移植において、超急性拒絶反応の主因となっている抗血液型抗体の誘導を抑制する事を目的に、抗がん剤を封入したPEG修飾リポソーム投与による選択的な抗体分泌抑制法の確立を提案している。 平成26年度では、①ヒトA型赤血球を用いた免疫、②腹腔内細胞によるリポソームの取り込み、について検討した。成人男性より採取した赤血球をマウスの腹腔内に投与して免疫した。免疫後1週間の時点にてマウスより採血を行い、得られた血清中に含まれる抗血液型抗体量をELISAで測定したところ、十分量の抗血液型抗体が誘導されており、実験モデルの確立に成功した。さらに、PEG修飾リポソームが腹腔内のB-1細胞に選択的に取り込まれるか検討を行った。本検討ではPEG修飾リポソーム(PL)だけでなく、血液型抗体を分泌するB-1細胞に対する選択性を高めるために表面を血液型抗原で修飾したBlood group A修飾リポソーム(BGA-ML)も用いた。それぞれのリポソームをマウス腹腔内に投与し、1日後の腹腔内細胞による取り込み量を測定したところ、PL、BGA-MLの順で取り込み量が増大した。PLで取り込み量が少ない原因として、貪食細胞による取り込みがリポソーム表面のPEGによって抑制されたことが考えられた。続いてB細胞を染色し、B細胞集団におけるリポソームの取り込み量を観察したところ、いずれの群でも顕著な差は見られなかった。これらの結果から、PLはB細胞に選択的に結合している可能性が示唆された。以上の結果から、当初の想定どおり、PLは腹腔内B-1細胞に選択的に結合し、内封抗がん剤を送達しうるものと考えられた。
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