研究課題
本研究では、血液型不適合肝移植において、超急性拒絶反応の主因となっている抗血液型抗体の誘導を抑制する事を目的に、抗がん剤を封入したリポソームの使用を提案した。本提案は抗血液型抗体の主要な分泌細胞である腹腔内B-1細胞がTI抗原であるPEG修飾リポソームを認識して取り込むという、我々が新規に発見した現象を利用したものであった。これによって特異的に血液型抗原に対する免疫反応を選択的に抑制することで、血液型不適合生体肝移植の成績向上とレシピエントのQOLを向上させる事が期待できるものと考えた。実際に抗がん剤封入PEG修飾リポソームをマウス腹腔内に投与したところ、腹腔内B細胞における取り込みが確認された。さらに腹腔内B細胞へのリポソーム取り込みをより向上させるために血液型抗原で表面を修飾すると顕著に取り込み率が向上することが明らかとなった。しかしながら、抗がん剤封入PEG修飾リポソームを複数回投与しても抗血液型抗体の分泌を顕著に抑制することはできなかった。本検討では残念ながら抗血液型抗体の分泌を抑制することは出来なかったが、PEG修飾リポソームが腹腔内B-1細胞に取り込まれることや、生体に対する毒性を生じにくいことが明らかとなったため、今後腹腔内における滞留性や表面修飾など改良を加えることにより、安全で有効性の高い免疫抑制剤として利用できる可能性は高く、さらなる改良・改善の余地があるものと考えている。
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