研究課題
mTOR (mammalian target of rapamycin)は生物界に広く存在し、細胞の増殖活性を促す役割を有し、阻害薬は抗がん薬や免疫抑制薬として注目を浴びている。オートファジーは、不要タンパク質や老化ミトコンドリアの自己消化とアミノ酸の再利用を経て細胞死を免れるシステムであり、飢餓への適応とも考えられる。LC3タンパク質は、細胞内オートファゴソームの裏打ちタンパク質として知られ、オートファジー系における腫瘍タンパク質であることが知られている。従って、mTOR阻害薬は、細胞増殖活性を阻害するとともにオートファジーを活性化し、その指標とされるLC3タンパク質の産生亢進に繋がることが想定されることから、本研究では腎臓におけるmTOR阻害薬の効果指標として尿中のLC3の有用性を明らかにすることを目指し、まず初めにLC3定量系の構築を目指した。まず、市販のLC3タンパク質、いくつかの抗LC3抗体を用いて再検討した結果、既報どおりの組み合わせ(capture antibody: Cell Signaling Technology社[#2775];detection antibody: Novus Biologicals社[NB100-2331B];Nakagawa et al., Eur J pharmacol, 696: 143-154, 2012)が最も良好であることが確認された。本システムを用いて、慢性腎不全モデルラット由来の尿を用いて調べた結果、mTOR阻害薬エベロリムスの有無によって、尿中のLC3濃度が異なることも認められた。すなわち、研究初年度では次年度のヒト臨床検体を用いた検討に際しての準備を整えることができたと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
当初掲げた計画に沿って、研究初年度の目標を達成し、着実に結果を得ていると考えられる。
当初掲げた計画のとおり、研究第2年目では腎移植患者の尿を収集し、尿中のエベロリムス漏出量とエベロリムス投与の有無、術後経過との総合的な解析を行い、尿中LC3漏出量の定量数値化が腎移植患者におけるエベロリムスの効果モニタリングの指標として有用か否かを評価する。
実験用ラット購入の際、SPFグレードを当初予定していたが、実験施設の都合によりCLEANレベルであったため予想外に動物購入費用が安く収まったため。
今年度より新しく動物実験施設が竣工し、施設レベルとしてSPFグレードを取り扱えることとなったため、少数例のSPFラットを購入し、実験データの再現性確認に平成26年度の余剰金を使用する予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 7件)
PLoS ONE
巻: 9 ページ: e110527
10.1371/journal.pone.0110527
TDM研究
巻: 31 ページ: 1-5
Br J Clin Pharmacol
巻: 77 ページ: 910-912
10.1111/bcp.12211
J Am Soc Nephrol
巻: 25 ページ: 2316-2326
10.1681/asn.2013091001
Pharmacogenet Genomics
巻: 24 ページ: 356-366
10.1097/fpc.0000000000000060