研究課題/領域番号 |
26670091
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
池上 浩司 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20399687)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イメージング / 翻訳後修飾 / ラベルフリー |
研究実績の概要 |
本年度は、翻訳後修飾の未標識ダイレクトイメージングを目指し、精製チューブリン/微小管を用いた条件検討を重ねた。ポリグルタミン酸化が豊富な脳由来精製微小管を用い、ポリグルタミン酸化の未標識ダイレクト検出に必要なチューブリンの最低量を調べた。検討の結果、MALDI型質量分析計におけるレーザー照射領域あたり5~10フェムトモルのチューブリン分子が必要であることが分かった。これはマウス2個体の気管から精製した繊毛軸糸を1平方mmにした量に概ね等しい。実際のマウス気管サンプル上において繊毛軸糸微小管のポリグルタミン酸化を未標識ダイレクト検出する場合、レーザー照射領域内に0.2~0.5フェムトモル程度のチューブリンしか存在しないため、20倍程度の感度向上が必要であることも分かった。 上記問題はある程度想定していたため、微小管以上に高密度で組織内に存在するタンパク質をターゲットとしたダイレクト検出を企図し、リスクヘッジおよび挑戦的萌芽的視点でポリグルタミン酸化修飾の新規ターゲットタンパク質を探索した。探索の結果、ポリグルタミン酸化チューブリンが豊富な組織で微小管以上に多量かつ高密度に存在するタンパク質Aがポリグルタミン酸化されることを示唆するデータを得ることに成功した。in silicoで酵素消化を検討した結果、微小管のポリグルタミン酸化をダイレクト検出する際に使用する酵素Asp-Nに比べ酵素活性と切断部位特異性が高いトリプシンが使用でき、且つ検出に都合が良いチューブリンよりも短いペプチド断片を生成できることが分かった。 これらにくわえ、本研究が進展した際に未修飾ダイレクトイメージングを実際に適用する神経病理標本における微小管翻訳後修飾状態に関する知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小管サンプルにおけるスライド上酵素消化後のポリグルタミン酸化修飾検出は、挑戦的萌芽研究らしく困難に遭遇し、当初計画からやや遅れが生じた。一方で、研究開始時より困難をある程度予想していたため、萌芽研究としての挑戦性を保ちながらのリスクヘッジを図ってきた。この試みが奏功し、微小管よりもダイレクト検出・イメージングに適した新規のポリグルタミン酸化修飾ターゲットタンパク質の発見につながった。
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今後の研究の推進方策 |
微小管を用いた本年度の検討で明らかとなった問題点について、チューブリンと酵素の分子数比、酵素消化時の条件(液量、温度、時間、回数)、使用マトリクスの変更など、複数の視点でパラメータを再検討し、少なくとも繊毛軸糸あるいは培養神経細胞の軸索からポリグルタミン酸化を直接検出できる条件を決める。ここをクリアした後は、実組織標本から微小管だけを残し他のタンパク質を除去するという、組織標本側の処理について検討を行う。現段階では、タキソール投与により微小管を保持しつつの、マイルドな界面活性剤や両親媒性の液体を用いた処理を想定している。 一方で、未修飾ダイレクトイメージング法による翻訳後修飾の検出が本研究の目指すべき達成目標であり、当初計画した微小管翻訳後修飾の直接イメージングにとらわれる必要は必ずしもない。本年度発見された、より強力かつ正確な酵素消化によりチューブリンよりも短いペプチド断片を生み出すことができる新規ポリグルタミン酸化標的タンパク質についても、精製サンプルや界面活性剤・両親媒性液体を用いた夾雑タンパク質・脂質を排除した培養神経細胞を用い、直接イメージング法による検出を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度未使用の次年度使用額は10,000円弱であり所要額の1%に満たない。基金の利点を生かして年度を跨いでシームレスに研究を遂行したために発生したものである。平成27年3月から4月にかけても年度を意識せずに研究を行なったが、輸入扱い品など一部の商品で納入時期が遅れる関係上発注納品が次年度にずれ込むことになり、これにより微額の次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と交付額の合計1,409,632円は,おおむね当初計画どおりに使用するが、研究をより効率的に進めるために技術補佐員の謝金として物品費の一部を流用する計画である。使用内訳は、物品費:709,632円、旅費:300,000円、人件費・謝金:300,000円、その他:100,000円となる予定である。
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