研究課題
内弾性板は動脈血管において、内皮細胞と平滑筋細胞層との間に位置し、血管弾力性を保つとともに種々の物質の拡散を防ぐバリアとして機能する。内弾性板の破綻は動脈瘤や動脈硬化の発症に深く関わり、動脈機能を維持する上で極めて重要な細胞外構造である。動脈平滑筋層内に存在する弾性線維に比して厚く、緻密な膜状構造を有する内弾性板が、内皮細胞と平滑筋細胞層との間に形成される原理は殆ど解明されていない。本研究では「動脈内皮細胞から誘導される因子が平滑筋細胞に作用して、内弾性板が形成される」という仮説をたて、動脈内皮細胞選択的分離方法や細胞積層化による三次元組織構築法などの新技術、内弾性板の過形成を来すモデル動物を利用して、内弾性板形成に重要な因子を探索することを研究目的とした。今年度の成果として細胞接着因子のナノコーティング薄膜による細胞積層化技術を用いることによって、ラット平滑筋細胞から大動脈を模倣した5~7層の血管組織片を作成し、その内部に形成される弾性線維を評価する実験系を確立した。これらの新技術を基盤として、平滑筋細胞層に内皮細胞を上乗せしたモデルを作成し、内皮細胞の存在が弾性線維形成を促進する可能性が示唆され、その分子機序の解明を進めている。動脈の構造と機能を保つ上で極めて重要な内弾性板の破綻は血管病や老化と密接に関係するため、内弾性板形成の分子機序解明を目指す本研究は、血管分化・組織形成に関する基礎生物学のみならず、医学的・社会的にも極めて意義深いと考えられた。
すべて 2014
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Atherosclerosis
巻: 233 ページ: 590, 600
10.1016/j.atherosclerosis.2014.01.045.