研究課題
これまでの申請者の研究から、①発生期大脳皮質における微小血管の発生は極めて秩序だった発生様式を示すことで、特徴的・規則的な微小血管が構築され、②結果として、脳室に面した限られた領域へは決して血管が発生・侵入できない領域が存在することを明らかにしている(発表準備中)。興味深いことに、この領域はミトコンドリア局在型の活性酸素種の産生が促されていることが確認されていることから、神経幹細胞が増殖と分化を繰り返す、神経発生過程における極めて重要な領域で、血管発生を敢えて抑制するという生理現象の意義に興味が持たれる。本研究提案は、『血管が発生・侵入できない領域』の分子環境を解明すると共に、この領域が酸素環境の調節や代謝変化に如何なる意義を果たすのかを明確化することを目的とした。本研究によって、脳室帯のミトコンドリア局在型の活性酸素の産生レベルが高い神経幹細胞においては、PRドメインタンパク質の一種Prdm16の発現が有意に高いことを明らかにした。実際、Prdm16の過剰発現やノックダウンによって、神経幹細胞から多極性細胞への分化に障害を生じることが確認された。さらには、Prdm16の下流分子としてPGC-1αを同定し、PGC-1αの適切な調節が、神経分化過程でミトコンドリア局在型の活性酸素量の制御に必須の役割を果たすことを明らかにした(投稿中)。今後、神経幹細胞において活性酸素の産生量が高いことの生理的意義をさらに追求していきたい。
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Genes Cells
巻: 20 ページ: 758-770
10.1111/gtc.12274
巻: 20 ページ: 706-719
10.1111/gtc.12267