心臓は全ての動物の生命活動の中枢となっている臓器である。ヒトにおいて、特に先進国では心疾患は主要な死亡原因の一つである。また、心臓は常に収縮と弛緩を繰り返す事で血液を送り出すポンプとしてエネルギー(アデノシン3リン酸(ATP))を消費・供給している重要な臓器である。血液を送り出すポンプ機能に直結する生理学的な心機能の知見は培養細胞レベルと個体臓器レベルで乖離が存在している。そのような中、2009年にATP濃度を可視化するFRET蛋白質としてATeamが開発され、細胞株内部のATP分布と変動が報告された。そこで本研究ではこのATeamを応用して高解像度・高速反応性かつ定量的にATPを測定できる新規ATeamを利用して、マウス生体内でATP変動を測定できるシステムを構築することに世界で初めて成功した。このマウスを用いて正常な心臓が拍動する時に取るATPの動態を蛍光顕微鏡を用いて計測した。その結果、心臓の拍動と共にATP量が変動している事が明らかとなってきた。更に、このATP量の変化を高解像度かつ定量的に計測できている事が明らかとなった。また、成熟したマウスの心臓からコラゲナーゼを用いる事で単離して得られる成熟心筋細胞を用いて、電気刺激可能な培養液灌流型のチャンバー内で収縮と弛緩運動を行うように電気刺激した。その結果、成熟心筋細胞でも心臓丸ごとで観察されたATP量の変動と同様のATP動態を観察する事に成功した。
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