研究課題
本研究では、ミトコンドリア代謝によるリンパ球ケモタクシス制御という新たな仮説の確立に、細胞生理学実験と数理モデル解析を組み合わせた新しい手法で挑戦する。平成26年度は以下の検討を行った。培養Bリンパ球細胞A20では、細胞走化においてミトコンドリアは進行方向の後方に局在していた。また、ミトコンドリア代謝に関与すると考えられるミトコンドリアNa-Ca交換輸送体NCLXをsiRNAでノックダウンすると、CXCL12による細胞走化が抑制されることを既に明らかにしているが、CXCL12によるアクチン重合の促進やミトコンドリア局在化も著しく抑制されることが分かった。しかしながら、NCLXノックダウンA20細胞では、コントロールと比べて、細胞全体のATP含量に違いは認められなかった。以上の成果を学会発表した。マウス脾臓由来Bリンパ球においても解析を進めた。ミトコンドリアを構成する輸送体や酵素のキネティクスに関する情報が豊富な心筋細胞について、詳細なミトコンドリアエネルギー代謝の数理モデルを構築し、学会発表した。現在、リンパ球のデータに合うようモデルを精緻化している。リンパ球細胞走化数理モデルの精緻化に着手するとともに、代謝ーケモタクシス連関の数理モデル化の準備を進めた。光変換型蛍光タンパクKikGRのノックインマウスにUV照射することで、内在性の皮膚由来樹状細胞等をラベルする技術をもとに細胞遊走を解析する方法を共同発表(論文発表)した。
2: おおむね順調に進展している
論文発表ならびに学会発表ができ、おおむね順調に進展していると考える。
平成27年度は、平成26年度に引き続き、ミトコンドリア動態と細胞走化の定量的解析を進めるとともに、リンパ球の代謝とケモタクシスを再現できる数理モデルを構築する。シミュレーション解析から得られる作業仮説の検証を行う。
研究に必要な消耗品の効率的購入ができたため、次年度使用額が生じた。
当初の実験計画に基づき、実験を遂行する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
J Physiol Sci.
巻: 65 ページ: 11-24
10.1007/s12576-014-0326-7
Sci Rep.
巻: 4 ページ: 60630
10.1038/srep06030
http://isphysio.med.u-fukui.ac.jp/