研究課題
時間分解レーザー燐光偏光計測装置の構築、及び、データ解析プログラムの開発を行った。光源にはパルスYAGレーザーを用いた。パワーアッテネータ用の偏光子、ファイバー、投影レンズを介して、倒立顕微鏡の背面ポートに入射させた。偏光子を通して線偏光状態とした後、ダイクロイックミラーを介して対物レンズに入射させる。燐光は同じ対物レンズを通して集め、干渉フィルターと結像レンズ、角度検出の為の偏光子を介して時間ゲート付の光電子増倍管(浜松フォトニクス)に入射させた。市販の電動回転ステージ(シグマ光機)と独自に設計したマウント部品を用いて、偏光子の回転機構を組み込んだ。十分なりん光・遅延蛍光シグナルを得るために、低酸素状態で膜電位固定実験を行う必要がある。アクリル製の特殊なサンプルチャンバーを自作し、電極、溶存酸素プローブ用に小さな孔を3つあけ、窒素で飽和するためのチューブを備えた。低酸素状態は、glucose, glucose oxidase, catalaseを用いた化学法により実現する。この条件で20-30分間の計測が可能な事が確認できた。酸素濃度は、ファイバー酸素センサプローブ(Ocean Optics)を用いて径時的にモニターする系を構築した。光電子増倍管からの出力電流の記録と、偏光子の回転、光電子増倍管のゲート信号、励起パルス、膜電位のコマンド制御を同時に行うためのシステムを構築した。ある時刻における燐光の角度依存性を元に、三角関数によるフィッティングを行い、モーメントの角度を自動的に算出するソフトウェアを開発した。以上の方法で、~10マイクロ秒の時間分解能、~4度の角度分解能で、数ミリ秒間にわたって標識領域の回転を定量的に追跡できる装置を構築できた。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度中に予定していた、時間分解レーザー燐光偏光計測装置の構築、及び、データ解析プログラムの開発をおおむね、行う事が出来たため。
単量体で動作し、極めて安定的な発現が可能な事が分っている電位依存性フォスファターセの電位センサードメインに対して、二つの方法で、エオシンをラベルする。一つは、システインの点変異を導入し、Eosin-maleimideを用いてシステインのチオール基を修飾する方法である。これは細胞外からアクセス可能な、任意の箇所において行う事が出来る。もう一つは、HaloTagドメインをS1のN末側、もしくはS4のC末側に配置し、Eosin-HaloTagリガンドを用いて特異的に共有結合ラベルを行う方法である。この方法は、細胞内領域の特異的ラベルを可能にし、システインを用いる方法と相補的である。状態遷移を示さない事が既に分っている変異体を用いて計測系のチェックを行い、モーメントの角度がドリフトしない事を確認する。また、アフリカツメガエルの細胞膜は滑らかな膜ではなく、実際には入り組んだ構造をしていて、理想的な二次元膜ではない事が知られている。これによってモーメントの角度決定を困難にしてしまう可能性がある。その場合には、光全反射照明となるように光学系を追加し、ガラス基板と接している領域のみからのりん光・遅延蛍光を計測することで対処する。
他の実験に使っていた機器を一部、今回の研究に流用できるようになったため、未使用額が生じた。
非天然アミノ酸の導入を検討する為に新たに試薬類を物品費で購入する予定である。また、燐光計測ではバックグランウド信号により回転運動の過小評価が起きる可能性がある。これを克服するために、平成27年度、一分子計測の観察系を構築するための光源や光学部品の購入費に充てることも検討している。
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