研究課題
電位センサードメインの状態遷移について、詳細な機構の理解はまだされていない。燐光を発する色素で電位センサーを部位特異的にラベルし、状態遷移によって起きる偏光面の回転量、速度などから状態遷移機構の一端を明らかにする事を試みてきた。計測システムの構築は行ったが、低酸素下での細胞へのダメージが大きい事、燐光のバックグラウンドに起因する偽陰性信号を定量する方法の確立、の二つの課題が残っている。そこで、蛍光性非天然アミノ酸を用いた別のアプローチにより平行して実験も行ってきた。電位依存性フォスファターゼのセンサードメインの状態遷移機構に関して、「電位センサーの第4セグメントのみが局所的な構造変化を引き起こす」のか、「電位センサー全体がよりグローバルな構造変化を引き起こすのか」という点をアフリカツメガエル卵母細胞を用いた膜電位固定実験と蛍光計測により検討し、後者の可能性を示唆する結果を得ている。今年度は、さらに、ストレプトアビジンで修飾された金ナノ粒子を電位センサーの細胞外ドメインに部位特異的にラベルしたビオチンを介して結合させ、単一粒子からの光散乱像を得る事を行った。散乱異方性のあるナノロッドを用いることで、単一分子レベルで状態遷移のリアルタイム観察が出来る事が期待される。燐光偏向を用いた方法はアンサンブル計測であるで、金ナノ粒子を用いる事で分子ごとのばらつきを考慮した計測を行える可能性がある。また、金ナノ粒子を電位センサーの細胞内側にも部位特異的にラベルする方法を検討した。この目的のために微容量のエレクトロポレータを自作した。
2: おおむね順調に進展している
膜電位固定したツメガエル卵母細胞から燐光偏光の時間分解計測を行う観測システムを用いて予備実験を行ってきたところ、(1)燐光計測の為に溶存酸素同度を低下させ、尚且つ、シグナルノイズ比を稼ぐために長時間の繰り返し計測を行う際に、細胞へのダメージが顕著である (2)Eosin-Maleimideのビテリン膜への非特異的吸着が顕著であり、ビテリン膜を除去するとさらに細胞の機械的強度を低下させてしまう という二つの大きな問題が生じた。これらは注意深く検討すべき課題で闇雲に結果を急ぐべきではないと考え、金ナノ粒子を用いた別の方法論に取り組んだ。ビオチンアクセプター配列を電位センサーの機能を阻害することなく挿入可能な場所を探索し、単一金ナノ粒子の散乱像を得るところまで成功した事により、今後のナノロッドを用いた異方性散乱で燐光計測にはない利点を持つ計測実験に進める目途が立った。これらを総合的して「おおむね順調」とした。
昨年度までに得られている環境応答性の非天然アミノ酸蛍光レポーターを用いて得られた結果を論文として公表する。金ナノロッドからの異方性散乱を時間分解検出する計測システムを構築する。
燐光偏光を用いた計測に加え、金ナノロッドからの異方性光散乱を用いた計測実験も新たに開始したため。
金ナノ粒子材料や散乱計測の為の光学部品等。
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Scientific Report
巻: 7 ページ: 42398
10.1038/srep42398