研究課題/領域番号 |
26670104
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
山崎 純 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (50230397)
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研究分担者 |
八田 光世 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (30344518)
岡村 和彦 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授 (00224056)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スプライシング / 上皮細胞 / クロライドチャネル / 分化 / ミニジーン / 表皮 |
研究実績の概要 |
我々はCa2+活性化Cl-チャネル調節分子CLCAの局在・機能をこれまでに報告してきたが、近年未分化上皮に特異的に発現する短縮型アイソフォーム(CLCA-t)を見出した。アイソフォーム発現の理由として、未分化・分化の違いで異なるスプライシング制御因子による択一的スプライシングの変化が考えられた。平成26年度にはスプライシング機構を明らかにするために、CMVプロモーター、FLAGタグ、exon 8から10までの遺伝子領域(minigene)とその下流にGFPを連結したCLCA遺伝子スプライシング・レポータープラスミドを作成した。本レポーターは、CLCA-t型のスプライシングを受ければGFPが発現する仕組みになっている。HEK293細胞へ遺伝子導入したところ、GFP、FLAGならびにCLCA-t部分配列をもつタンパクとFLAGならびに全長型CLCA部分配列をもつタンパクの発現がWestern blot法により確認された。蛍光細胞染色法によってFLAG陽性細胞のうちGFP陽性あるいは陰性の細胞が認められた。以上の結果は異なるスプライシングアイソフォームの発現を示唆している。一方、分化・未分化状態のCLCA発現制御を明らかにする目的で、マウス角化細胞株Pam212で転写制御を検討したところ、Ca2+濃度増加によって分化が促進されCLCAの発現が増大することが明らかになった。プロモーター解析によると、NF-kappaB結合部位が転写活性に重要であることを見出した。これらの結果は、CLCA遺伝子の発現調節にはCa2+とともにNF-kappaB活性が関与することを示している。これらの条件の違いによって分化状態を変えた表皮細胞株で、CLCAのスプライシングスイッチを今後検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スプライシング機構を明らかにするために、CMVプロモーター、FLAG タグ、exon 8から10までのminigene、GFPを連結したCLCA遺伝子スプライシング・レポータープラスミドをHEK293細胞へ遺伝子導入し、異なるアイソフォームの発現を蛍光細胞染色やWestern blottingにより確認することができた。しかしながら、GFPだけが発現する細胞やGFPのみのタンパク長に相当するバンドも検出された。GFP配列の直前から翻訳開始する可能性が考えられたため、新たなレポータープラスミド構築の検討が必要になった。 スプライシング・レポータープラスミドの導入効率が表皮細胞株では著しく劣るため、HEK293細胞の場合とは異なる導入方法を検討する必要がでてきた。
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今後の研究の推進方策 |
スプライシング・レポータープラスミドの再構築を済ませ、表皮細胞株での導入方法を検討した上で、細胞外Ca2+濃度の違いによって分化または未分化状態にした表皮細胞株におけるスプライシングスイッチを検討する。プロモーターdeletion変異体や転写因子発現プラスミドの導入で転写因子群の作用を検討する。 引き続いて、未分化・分化の違いによるスプライシング部位の変化がエピジェネティック制御(クロマチン修飾)を介する可能性を明らかにするために、histone deacetylase 阻害薬や polycomb複合体阻害薬の有無でスプライシング選択が影響を受けるか否かを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の結果から、今回作成したスプライシング・レポータープラスミドによって、GFP配列の直前から翻訳開始する可能性が考えられたため、新たなレポータープラスミドの構築が必要になった。そこで、表皮細胞株を用いたスプライシング・レポーター実験への展開が遅れたために次年度使用額が生じるに至った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はプラスミドの再構築から始めて表皮細胞株を用いたレポーター実験を完了する予定である。また、当初の計画にあるエピジェネティック制御(クロマチン修飾)による関与についての研究も合わせて実施していく。これらの計画を遂行するために、当該の繰越金と次年度の予定額をあわせて使用する。
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