研究課題
Cl- 透過性を制御するCLCAの短縮型アイソフォーム(CLCA-t)に関して、スプライシング機構を明らかにするために、exon 8~10までの遺伝子領域(minigene)を含むレポータープラスミドを作成した。ヒト由来ケラチノサイトN/TERT1株では、Ca2+ 濃度の増加による分化マーカーであるケラチン10の発現パターンの変化が確認された。N/TERT1株にminigeneを遺伝子導入したところRT-PCRによってexon 8+10が検出された。Western blotによって、短縮型がCa2+ 濃度の増加によって抑制された。また、3次元のモデル系においてはminigeneを遺伝子導入後、RT-PCRによりexon 8+10のみ検出された。以上より、短縮型アイソフォームが選択的に発現することが明らかになった。エピジェネティック制御とはDNAの塩基配列の変化を伴わずに遺伝子発現の多様性を起こす仕組みであり、転写制御と選択的スプライシングとの関係も示されてきた。ラットの口蓋粘膜上皮と線維芽細胞からなる3次元構築系において、Ezh2阻害剤の3-deazaneplanocin A(DZNep)は重層化やCLCA-fタンパクとmRNAの発現を抑制するが、基底層でのCLCA-tの発現は弱いながらも認められた。また、ラット由来表皮細胞株FRSKにおいて、DZNepはCLCA-f発現を抑制するが、ケラチン1の発現には影響を与えなかった。他方、基底層でのCLCA-tの発現は増強され、ケラチン14との共発現が認められた。以上の結果から、Ezh2阻害剤によるヒストンH3 Lys27トリメチル化阻害が、表皮あるいは口腔粘膜におけるCLCAアイソフォームのスプライシングスイッチに関与することが示唆された。
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