旧施設から移転を完了、新動物施設が稼働し始め、飼育スペースも確保できたことから、トランスジェニックラットの導入を計画した。まず、CAGプロモーターでGFPを発現し、全身の組織細胞において緑色蛍光を呈するトランスジェニックラット[SD-Tg(CAG-EGFP)40sb]系統(GFPラット)を、まず、ブリーダーの市販動物として導入することとした。また、前年度に検討し始めた、全身の組織細胞にLacZを発現するトランスジェニックラット[DA-Tg(CAG-lacZ)30JmskのNBRPNo.0280](lacZラット)については、GFPラットとの交配を計画した。ただし、F1個体の組織細胞が全てGFP陽性・lacZ陽性であるようにするため、まず、GFPラット、lacZラット共にホモ接合体として繁殖した後、それらを交配することとした。他方、新施設での交配計画を立案している間、これまでにラット大腿骨骨髄より採取した凍結骨髄細胞と実験手技について検証した。解凍後培養した細胞を、新規に導入したセルソータ(ベイ バイオサイエンス社JSAN JR Swift)により分析したところ、ラット骨髄間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell; MSC)を一般的に同定する細胞マーカー(CD29陽性・CD44陽性・CD90陽性、CD45陰性・HLA-DR陰性)に全て合致したことから、今後、移植実験に向けて細胞を単離できる目途が立った。また、組織破砕装置(ミルテニーバイオテク社 gentleMACS Dissociator)と組織分散キット(同社製)の酵素試薬については、細胞障害を最小限にする条件を確立することができた。施設移転で進捗に遅れが生じたものの、予定していた課題は着実に解決に至っている。
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