研究課題
血管内皮細胞とペリサイトの双方向性シグナル(ペリサイト→内皮細胞、内皮細胞→ペリサイト)が血管成熟化及び血管新生を制御する分子メカニズムを解明するため、平成26年度は以下の研究を遂行した。1.ペリサイトと血管内皮細胞で異なる蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュのイメージングを行い、頭部および体幹部の血管におけるペリサイトと内皮細胞の動態をライブで解析した。その結果、頭部では脳実質外に存在する脳底動脈周囲でペリサイトが出現すること、さらに、これら細胞は活発に増殖し、内皮細胞上を移動することで脳実質内にある中心動脈を被覆することが分かった。また、体幹部では、背側大動脈の腹側部位でペリサイトが発生し、その後、活発に増殖することで背側大動脈全体を被覆することが示された。また、節間血管を覆うペリサイトには、節間血管周囲で発生する集団と、背側大動脈から移動してくる集団が存在することが分かった。さらに、発生段階において、ペリサイトは主静脈や静脈節間血管のなどの静脈血管には存在せず、主に動脈血管を被覆することが分かった。2.血管の成熟化、安定化におけるペリサイトの役割を理解するため、ペリサイトでニトロ還元酵素(NTR)を発現するゼブラフィッシュを樹立した。NTRはメトロニダゾール(MTZ)をDNA損傷物質に変換するため、MTZ投与によりペリサイトをアブレーションできる。実際に、水槽にMTZを投与すると、このゼブラフィッシュ胚及び成魚のペリサイトが迅速にアブレーションされることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
上述したように、平成26年度は「生体における内皮細胞とペリサイトの動態を観察するとともに、ペリサイトを特異的にアブレーション可能な系を樹立し、ペリサイト由来シグナルが血管安定化を誘導する機序を解析する」という当初の研究目標をほぼ達成することができた。従って、本研究は概ね順調に進展している。
基本的には平成26年度同様、当初の実験計画通り研究を遂行していく。しかし、当初は本研究の終了時に研究成果を発表することを予定していたが、他の研究グループより先にペリサイトの挙動をライブで観察できるシステムを報告するため、平成27年度前半には、これまでの研究成果をまとめ論文投稿を行う。また、今回我々が樹立したペリサイトのアブレーションシステムは、非常に活性が高く、成魚でも効率的にペリサイトをアブレーションできたので、当初はゼブラフィッシュの幼魚を用いた解析を予定していたが、成魚を用いた解析も実施していく。
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