研究課題
骨格筋の収縮により活性酸素の産生は増加する。特に、急性の高強度運動により活性酸素の生成は促進され、骨格筋組織への構造的損傷が引き起こされる。このような状態が続くと骨格筋におけるレドックスの乱れが生じ、筋疲労を加速させ、運動耐容能の低下に繋がることが知られている。一方、転写因子NF-E2-related factor 2(Nrf2)は侵害刺激に対して生体が発動する防御機構を制御する因子であり、その転写因子の賦活化は運動刺激による酸化ストレスを制御することで骨格筋組織を保護し、筋疲労を遅延させる可能性が考えられる。これらのことから、本研究では運動耐容能の増進に対するNrf2の保護作用を明らかにするために、Nrf2遺伝子の欠失もしくは賦活化させたマウスを利用し、小動物用トレッドミルを用いて運動負荷実験を実施した。8-12週齢の野生型マウスとNrf2の遺伝子欠損マウスに4日間、Nrf2賦活剤であるスルフォラファンを投与し(25 mg / kg)前後における疲労困憊走行距離(5-28m / 分の漸進的運動負荷)を比較した。その結果Nrf2の遺伝子欠損マウスは野生型と比べて走行成績が著しく低いことが明らかになった。また、野生型マウスではNrf2賦活剤の前投与により走行距離が大幅に伸びることが示された。しかしながら、Nrf2の遺伝子欠損マウスでは走行距離の変化はみられなかった。筋損傷マーカであるLDH及び CPK総活性値と脂質酸化損傷マーカーであるMDAにおいてもNrf2賦活剤の投与により有意に低下することが示された。これらの結果から、骨格筋でのNrf2を介した酸化ストレスの抑制が筋疲労を遅延させ、運動耐容能の増進に繋がった可能性が考えられた。
3: やや遅れている
遺伝子改変マウスの作製過程に遅延が生じている,また,骨格筋組織からの筋管細胞の分化誘導の初代培養系の確立にも時間を要している.
最近の研究報告により,転写因子 Nrf2の役割において、本来の抗酸化ストレス応答に加えて、脂質および糖代謝においても制御作用をもたらすことが判明されている。Nrf2の賦活化は脂質および糖代謝経路を促進させ、エネルギー利用を向上することで運動耐容能を増進する可能性が考えられる。今後は、短期間・長期間におけるNrf2賦活剤の投与が、各代謝経路の因子の発現レベルや血中のエネルギー基質に及ぼす影響について解析する予定である。
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