研究課題
本研究は低温に応答して細胞内領域がチロシンリン酸化をうける膜型分子SIRPαのシグナル伝達系を中心に、恒温動物に内在する低温応答性シグナルの生理機能とシグナルメカニズムの解析を目的とする。前年度までに確立した実験系を用いて、SIRPαあるいはSIRPαの細胞外リガンドであるCD47の全身KOマウスを使ってLPS誘導性低体温モデルを解析したところ、野生型マウスに比べてSIRPα、CD47の全身KOマウスは、腹腔内LPS投与負荷に対して感受性が高く、低体温および活動性の低下がより長期にわたって続くことが明らかとなった。低温応答性SIPRαシグナルの欠損がLPS誘導性低体温を増強することから、どのような細胞に発現するSIRPαが重要であるかを検討するために、SIRPαを強く発現するマクロファージで特異的にSIRPαKOしたマウスで解析を行ったが、これまでのところ、全身KOマウスで見られたLPS高感受性は認められておらず、SIRPα全身KOマウスにおけるLPS誘導性低体温の増強は、これらの細胞以外に発現するSIRPαの関与が考えられた。一方で、浸水により低体温を誘導したマウスの脳組織からSIRPαを免疫沈降し、質量分析によるシグナル複合体の解析に取り組んだ。低温依存性にSIRPαとの結合が変化するシグナル分子の同定には至らなかったが、SIRPαが分子シャペロンと複合体を形成する可能性を新たに見出している。
2: おおむね順調に進展している
SIRPαとそのリガンドCD47の全身KOマウスのどちらもが、LPS誘導性に強い低体温を示すことが確認できた。このメカニズムについてのコンディショナルKOマウスを用いた検討は必ずしも予測どおりすすんでおらず、マクロファージのSIRPαが欠失しただけでは全身性KOマウスの表現型が再現できなかった。しかしながら、この結果は他の細胞に発現するSIRPαが低体温調節に重要であることを間接的に示しており、一定の知見を与える結果と判断した。また、シグナル複合体の解析については、低温依存性に変化するSIRPα結合分子の同定には至らなかったが、あらたな関連分子を同定するための手がかりを得つつあることは進展として評価できると考えた
LPS誘導性低体温の制御に係わるSIRPαは、どの細胞で機能するのか解析を継続する。低体温時のSIRPαシグナル複合体の変化について解析を継続する。CD47のコンディショナルKOマウスについて解析を行う。
前年度からの繰り越し分に加えて、実験補助員を投入せずに実験を進めたため、人件費を中心に次年度使用額が生じた。
計画を推進するための人件費、消耗品費として使用する。特に最終年度として研究を加速するために実験補助員などの人件費としての使用を見込んでいる。
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http://biosignal.dept.med.gunma-u.ac.jp/