研究課題
うつ病や統合失調症などの精神疾患の発症原因の1つとして過剰免疫反応の関与が示唆されているが、その全容は未だ不明な点が多い。これまでに我々は、インターフェロンの抗ウイルス作用に重要な役割を果たしているインターフェロン誘導性膜タンパク質Interferon Induced Transmembrane Protein 3(IFITM3)が周産期の自然免疫応答誘発性の神経発達障害に関与していることを明らかにした。IFITM3が過剰免疫反応による精神疾患の発症に関与している可能性は高く、中枢神経系におけるIFITM3の機能を解明することで精神疾患の発症メカニズムの一端を明らかにできると思われる。エンドサイトーシスは様々な分子が時間空間的に複合体を形成することで制御されており、神経機能調節に重要な役割を果たしている。一方、IFITM3は直接または間接的にエンドサイトーシスに関与する分子と結合し、その機能を障害すると考えられる。そこで平成26年度は、IFITM3によるエンドサイトーシス制御機構を解明するための実験を行い、以下の結果を得た。(1) LC-MS/MS解析によりIFITM3の新規結合タンパク質候補としてRabGDIを同定した。(2) IFITM3とRabGDIの結合をGST pull down assayにより確認した。(3) IFITM3の変異体(非リン酸化、非パルミトイル化)を作製した。(4) イメージングの準備として、蛍光タンパク質とFstl1の融合タンパク質を発現するプラスミドを作製した。
2: おおむね順調に進展している
TIRF顕微鏡を用いたグリア細胞からのFstl1の分泌測定には至らなかったが、イメージングに必要な実験材料の作製は順調に進展した。また、最も困難が予想されたIFITM3と相互作用を示す分子が同定できたことから、平成26年度の研究計画は全体としては概ね順調に実施できたと評価した。
1. IFITM3によるエンドサイトーシス制御機構の解明平成26年度に同定したIFITM3結合タンパク質がエンドサイトーシスに与える影響について検討する。また、IFITM3と結合しない変異体を作成し、結合タンパク質のノックダウンによるエンドサイトーシスの変化が変異体の導入でレスキューされないことを確認する。さらに、エンドサイトーシスにより取り込まれた分子(EGFRなど)の細胞内輸送経路の変化についても解析する予定である。2. IFITM3のFstl1分泌増加メカニズムの解明Fstl1の分泌過程についてリアルタイムイメージングにより検討する。Fstl1を蛍光タンパク質との融合タンパク質として発現させ、TIRF顕微鏡を用いてFstl1の細胞内輸送過程を解析する。また、上記のIFITM3結合タンパク質のFstl1分泌増加への関与についても検討する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
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http://www.med.nagoya-u.ac.jp/pharmacy/