研究課題
Racを介したケラチノサイトから脂肪細胞への分化・誘導シグナリングの同定とその機構の詳細を解明した。具体的には、ケラチノサイトからRacの活性化により分泌される5種類の因子(a,b,c,d,e)をDNAマイクロアレイによるスクリーニングとRT-PCRによる確認解析により同定した。さらに、a+b, a+cの組み合わせ刺激をした場合には、a, b, cの単独刺激に比し劇的に脂肪細胞への分化が促進される事を、未分化中胚葉細胞3T3-L1細胞を用いた実験により発見した。次に、脂肪細胞の分化に最も関与するケラチノサイトからの分泌因子a, bのRacを介しての分泌機序を各種の阻害剤を用いて検索し(マウス初代培養ケラチノサイトに処置)、その中で最もERK阻害剤が効果的であることを突きとめた。これらの結果より、脂肪細胞の分化を誘導する薬物の標的の可能性のある因子が見出された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画では、以下の3事項の遂行を予定していた。A) Racを介したケラチノサイトから脂肪細胞への分化・誘導シグナリングの同定とその機構の詳細、B) ケラチノサイトからのシグナルが褐色脂肪細胞様(ベージュ脂肪)細胞の誘導因子である事、C) 糖代謝障害や肥満を予防・治療する新規治療薬として、B)で同定した因子のケラチノサイトからの分泌を亢進することでベージュ脂肪細胞への誘導を促進する化合物をスクリーニング・開発する本年度研究により、計画A)は完了し、B)の計画を遂行中であるため、概ね計画通り進んでいると判断している。
B)のケラチノサイトからのシグナルが褐色脂肪細胞様(ベージュ脂肪)細胞誘導因子である事の証明は、未分化中胚葉細胞3T3-L1細胞とマウス初代骨髄間葉細胞を用いて、a, b,の単独処置及びa+bの処置後のUCPの上昇を、WB, 免疫染色, quantitative PCR(qPCR)により明らかにすることを進めている。B)の実験でベージュ脂肪細胞への分化を同定できれば、初代培養ケラチノサイトを用いて、a, bの分泌を亢進する化合物をライブラリーからスクリーニングすることにより、ベージュ脂肪細胞への誘導を促進するリード化合物を同定・開発する予定である。
上記のごとく、Racを介したケラチノサイトから脂肪細胞への分化・誘導シグナリングの同定とその機構の詳細を解明出来たが、この刺激が褐色脂肪細胞様(ベージュ脂肪)細胞誘導因子である事の証明には至っていない(現在進行中)。この進行中の実験には、高額なマウス初代骨髄間葉細胞の購入(と一回の実験に際し、20匹のマウスの購入の併用)含まれている。また、この実験の完了後には、高額な化合物ライブラリーの購入の必要があり、これらの購入のための金額を繰り越した。
1-2回のマウス初代骨髄間葉細胞の購入、2-3回の20匹単位でのマウスの購入、化合物ライブラリーの購入を予定している。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (2件)
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