研究実績の概要 |
Racを介したケラチノサイトから脂肪細胞への分化・誘導シグナリングの同定とその機構の詳細の解明を行った。 まず、DNAマイクロアレイによるスクリーニングにより、ケラチノサイトからRacの活性化により分泌される5つの因子(a,b,c,d,eと命名)を同定し、さらにRT-PCRにより、これらの因子が分泌されることを確認した。更に、a+b, a+cの組み合わせ刺激をした場合には、a, b, cの単独刺激に比し劇的に脂肪細胞への分化が促進される事を、未分化中胚葉細胞3T3-L1細胞及びC3H10T1/2細胞を用いた実験により見出した。 次いて、脂肪細胞への分化に最も関与するケラチノサイトからの分泌因子a, bのRacを介しての分泌機序を、種々の阻害剤を用いて検索し(マウス初代培養ケラチノサイトに阻害剤を処置後、ELISA法により、a, bの分泌量を定量)、ERK阻害剤が最も効果的であることより、ERKシグナルの関与を突きとめた。 最後に、我々が発見した脂肪分化シグナルが、脂肪細胞の中でも白色細胞への分化を促進するのか、それとも褐色細胞への分化を促進するのかの同定を定量的PCR(UCP, PGC1a, Cidea, IGFBP3, TCF21, FABP4に着目)により試みた。その結果、我々が発見したa+b刺激は、C3H10T1/2細胞を褐色細胞よりもむしろ、白色脂肪細胞に向けて(優位に)分化させるシグナルであることが同定できた。
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