研究課題
近年、ES細胞の多能性を規定する因子として発見された4つの因子が、全て転写因子であったことから、転写因子による遺伝子発現制御の重要性が再認識されている。本研究では転写因子による遺伝子発現制御の解明を目的に、さまざまな転写因子によっての転写調節領域に特異的にリクルートされる転写のコアクチベーターやクロマチン制御因子を、マイクロビーズに固定化したクロマチン付き転写調節領域を用いて網羅的に同定する方法を確立する。私はこれまでに、本方法を用いて、新規の転写複合体の同定を行ってきた【Takahashi H, et al. Cell 2011】。本研究では、さらに本方法を発展させ、さまざまな遺伝子の転写調節領域にリクルートされる転写制御因子を網羅的に明らかにする。私はメディエーター転写複合体のサブユニットMed26が、新規の転写伸長因子複合体 Little elongation complex(LEC)をsmall nuclear RNA(snRNA)などのnon-coding RNA遺伝子領域にリクルートし、それらの転写を促進することを明らかにした【Takahashi H, et al. Nature communications 2015】。本研究では、snRNAの転写に必須の転写因子OCT1によって、メディエーターを含む、どのような転写制御因子がリクルートされるのかを同定するために、OCT1結合配列を有する転写調節領域DNAマイクロビーズを作製した。
2: おおむね順調に進展している
OCT1のリコンビナントタンパク質、OCT1結合配列を有する転写調節領域DNA、DNA鋳型のクロマチン化に必要なヌクレオソームの精製など、本法の確立に必要な試料の作製は順調に進んでいる。リコンビナントタンパク質のOCT1と核抽出液を用いて、OCT1によって転写調節領域にリクルートされる転写制御因子の精製を行う。
クロマチン化転写調節領域マイクロビーズを作製し、それをリコンビナントタンパク質のOCT1、肝がん細胞株の核抽出液と混合し、OCT1によって転写調節領域にリクルートされる転写制御因子の精製を行う。精製した転写制御因子を直接トリプシンで消化した後、質量分析計を用いて網羅的に同定する。同定された転写制御因子が核内でタンパク質複合体を形成しているかどうかを、生化学的手法により調べる。また、同定された転写制御因子が実際に肝細胞において、OCT1と共にその標的遺伝子の発現を制御しているかどうかを、ChIP解析を行い明らかにする。さらに、OCT1をノックダウンした場合に、同定された転写制御因子の標的遺伝子領域へのリクルートが減少するかどうかもChIP解析によって明らかにする。また、同定された転写制御因子をノックダウンした場合に、OCT1の標的遺伝子の発現が低下するかどうかも検討する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Nature communications
巻: 6:5941 ページ: 1-15
10.1038/ncomms6941
eLife
巻: In press ページ: In press
Molecular and cellular biology
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~d20505/takahashi/