研究課題
タンパク質ポリチオール化は、タンパク質中のシステインチオール基(-SH基)にさらにイオウ原子が付加する(-SSH)反応で、ある種の酵素反応の中間体(rhodanase等)としての生成などが報告されている。しかしながら、実際の細胞内でどのようなタンパク質にポリチオール化が起こっているのか、またそれがどのように制御されているのかはほとんどわかっていない。またタンパク質ポリチオール化を検出・同定する解析方法が報告されているものの、選択性や特異性に問題が指摘されている。本研究では、タンパク質ポリチオール化を選択的に検出する反応条件を検討し、それを基盤としたプロテオミクスを構築するとともに、これまでほとんどわかっていない生体内におけるポリチオール化反応の制御機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、ポリチオール化タンパク質を特異的に標識するビオチンラベル化法を構築した。具体的には、MSBT (methylsulfonyl benzothiazole)にてポリチオール基を修飾した後、シアン化ビオチンにて特異的に置換反応を誘導することでポリチオール基にビオチン残基を導入した。これに対して、アビジン化ペルオキシダーゼを反応させることでウェスタンブロット法によってポリチオール化タンパク質の検出に成功した。さらに修飾タンパク質を2次元電気泳動で展開し、そのスポットを消化したサンプルを質量分析にて解析することで、ポリチオール化タンパク質の網羅的解析が可能であることを明らかにした。システインパースルフィドの生成酵素のひとつであるシスタチオニンγリアーゼの強制発現により、細胞内のポリチオール化タンパク質のバンド強度が増強した。このことから、当該法が細胞内のポリチオール化タンパク質の優れた検出法として適応可能であることが示された。
1: 当初の計画以上に進展している
当該方法により、試験管内での反応のみならず、培養細胞におけるポリチオール化タンパク質の検出に成功した。さらにプロテオーム解析の結果、20種以上のタンパク質の同定に成功した。
当該方法の反応条件を検討する中で、ポリチオール基に対するMSBTの反応性ならびに、その後のシアン化ビオチンの置換反応の効率をより改善させる必要性が分かってきた。今後は、ラベル化効率の向上を目指して解析を進めるとともに、細胞内でのポリチオール化タンパク質の機能解析をすすめる。
試薬品の費用を節約する事ができた為。
来年度の試薬として使用する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
細胞工学
巻: 34 ページ: 392-395
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
巻: 111 ページ: 7606-7611
10.1073/pnas.1321232111
Free Radic. Biol. Med.
巻: 77 ページ: 82-94
10.1016/j.freeradbiomed.2014.09.007.
感染・炎症・免疫
巻: 44 ページ: 16-21
http://kumadai-bisei.com