granuphilin欠損膵β細胞株に、蛍光標識したgranuphilinを発現させることにより、granuphilin陽性の細胞膜にドッキングした顆粒と、陰性の非ドッキング顆粒の開口放出動態を、全反射顕微鏡により観察した。その結果、陽性顆粒は、陰性顆粒に比して、刺激前の基底状態で動きに乏しく、刺激後も開口放出効率が著しく低いことがわかった。この結果は、granuphilinが分泌顆粒を細胞膜に繋留して、その動きを制限するとともに、開口放出を抑制していることを、生きた細胞ではじめて示したことになる。これまでの遺伝学的解析により、細胞膜にドッキングした顆粒を開口放出可能にするプライミング因子の候補として、Munc13が想定されている。実際、granuphilinとは別の蛍光で標識したMunc13を上記細胞に導入したところ、granuphilin陽性顆粒の開口放出効率が増大した。開口放出した顆粒における各蛍光量の変化を測定したところ、分泌刺激後、ドッキング顆粒にMunc13が集積し、その後、granuphilinが顆粒膜から解離することがわかった。この知見は、開口放出時におけるドッキング、プライミングに関わる分子の挙動を生細胞ではじめて観察し、それぞれの過程の時系列を明らかにしたことになる。現在、granuphilinとMunc13のリコンビナント分子を作製して、これらのタンパク質が、膜融合に関わるSNAREやMunc18分子とどのような相互作用をするのか、in vitroの系で解析している。
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