今後の研究の推進方策 |
1.レトロトラスポゾンのレポーターシステムを用いた解析 レトロトランスポゾンレポーターシステムは、すでに神経細胞やHeLa細胞等で複数の実績のあるシステムを用いる (Moran, J. V., et al., Cell (1996), Coufal, N.G., et al., Nature (2009))。このレポーターシステムは、ヒトで変動遺伝子と知られているLINE1の3'UTRにGFPカセットがLINE1の転写方向と逆向きに埋め込まれている。また、逆向きのGFPカセットにはLINE1の転写方向と同じ向きのイントロン配列が含まれいる。LINE1が転写された後、スプライシング、逆転写、ゲノムへの組み込みが起こり、GFPが発現するようになる。LINE1は、内部のプロモーターによって発現が制御されるため、このレポーターコンストラクトは内在性のLINE1と同等の働きをすると考えられている。本レポーターをヒト体細胞に導入し、体細胞初期化過程でのLINE1のゲノムへの組み込みをリアルタイムで追い、さらには、体細胞初期化過程の時期特異的マーカーとともにFACS解析を行なうことによって、ゲノムアダプテーションの生じやすい時期を特定する。
2.バイオインフォマティクスを用いたゲノム改変の生理学的意味の解析 前年度で同定した体細胞初期化過程でのレトロトランスポゾン挿入箇所に共通性があるか、挿入箇所に存在する遺伝子に関連性があるかを調べる。iPS細胞複数クローン共通の挿入箇所が見つかれば、その挿入箇所に存在する遺伝子の強制発現およびノックダウンを用いて、体細胞初期化の効率を調べ、ゲノムの改変による体細胞初期化過程における生理学的意義を明らかにする。
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