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2014 年度 実施状況報告書

体細胞初期化過程における内在性レトロトランスポゾンの役割

研究課題

研究課題/領域番号 26670137
研究機関京都大学

研究代表者

山本 拓也  京都大学, iPS細胞研究所, 助教 (60546993)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードゲノム / 発生・分化
研究実績の概要

近年の研究により、胚の初期発生過程や神経発生過程といった特定の時期に内在性レトロトランスポゾンによるゲノムの改変が高頻度で起こることが明らかとなってきた。つまり、細胞運命変換過程のある特定の時期、ある特定の細胞でゲノムDNA配列の改変が高頻度で起こりうる。本研究では、人工的な細胞運命変換過程である体細胞初期化過程に着目し、以下の3つのことを明らかにすることを目的とする。
1. 体細胞初期化過程でレトロトランスポゾンによるゲノム改変の起こる頻度と場所の特定
2. 体細胞初期化過程でレトロトランスポゾンによるゲノム改変が生じやすい時期の特定
3. レトロトランスポゾンによるゲノムの改変が体細胞初期化に与える影響

本年度は、ヒトにおいて変動遺伝因子として明らかになっているレトロトランスポゾンL1、Alu、SVAの完全長配列および初期化因子導入のために使用するレトロウィルスベクターの配列をもとにDNAプローブセットを設計し、それら配列を持つDNA断片をハイブリダイぜーションによって全ゲノムから濃縮し、ゲノムDNAライブラリーを作製した。作製したライブラリーを次世代シーケンサーで両端から読むこと(ペアエンドリード)によって配列を決定し、独自に構築した解析パイプラインを用いることによって、iPS細胞2株とそのもとになった体細胞のレトロトランスポゾン挿入箇所をゲノムワイドに同定した。結果、それぞれのiPS細胞のみでみられるレトロトランスポゾン挿入箇所が存在することが明らかとなった。これらのiPS細胞におけるレトロトランスポゾン配列の挿入は、体細胞初期化過程で内在性のレトロトランスポゾンによって行われたと示唆される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、RC-seqを改良した手法を立ち上げ、独自の解析パイプラインを構築することによって、iPS細胞および体細胞でのレトロトランスポゾンの挿入箇所をゲノムワイドに同定した。また、iPS細胞特異的な挿入箇所も同定できており、初年度の目標は達成できている。

今後の研究の推進方策

1.レトロトラスポゾンのレポーターシステムを用いた解析
レトロトランスポゾンレポーターシステムは、すでに神経細胞やHeLa細胞等で複数の実績のあるシステムを用いる (Moran, J. V., et al., Cell (1996), Coufal, N.G., et al., Nature (2009))。このレポーターシステムは、ヒトで変動遺伝子と知られているLINE1の3'UTRにGFPカセットがLINE1の転写方向と逆向きに埋め込まれている。また、逆向きのGFPカセットにはLINE1の転写方向と同じ向きのイントロン配列が含まれいる。LINE1が転写された後、スプライシング、逆転写、ゲノムへの組み込みが起こり、GFPが発現するようになる。LINE1は、内部のプロモーターによって発現が制御されるため、このレポーターコンストラクトは内在性のLINE1と同等の働きをすると考えられている。本レポーターをヒト体細胞に導入し、体細胞初期化過程でのLINE1のゲノムへの組み込みをリアルタイムで追い、さらには、体細胞初期化過程の時期特異的マーカーとともにFACS解析を行なうことによって、ゲノムアダプテーションの生じやすい時期を特定する。

2.バイオインフォマティクスを用いたゲノム改変の生理学的意味の解析
前年度で同定した体細胞初期化過程でのレトロトランスポゾン挿入箇所に共通性があるか、挿入箇所に存在する遺伝子に関連性があるかを調べる。iPS細胞複数クローン共通の挿入箇所が見つかれば、その挿入箇所に存在する遺伝子の強制発現およびノックダウンを用いて、体細胞初期化の効率を調べ、ゲノムの改変による体細胞初期化過程における生理学的意義を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

前年度において、次世代シーケンサーから得られた大規模データを処理するパイプラインの構築に想定よりも時間がかかり、本年度の予備的実験を開始することができなかった。また、結果をまとめて学会で発表するまでに至らなかった。このため、次世代シーケンサーのデータに基づいた解析および学会発表は次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てる。

次年度使用額の使用計画

本年度予算は、各種実験で使用する試薬類やキットを中心とした消耗品に充てる。内訳としては、分子生物学用一般試薬(核酸精製キット、PCR試薬、次世代シーケンサー試薬等)、細胞培養用培地などにかかる費用である。研究の情報収集および学会発表として、海外旅費(200千円)および2回の国内旅費(200千円)を想定している。

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公開日: 2016-05-27  

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