研究課題
我々は、世界で初めて、アクチン線維と細胞膜が緊密に結合していること、それによってアクチン線維の網目が細胞膜をコンパートメント化していることを見出し、アクチン膜骨格と名付け、生物学的意義を明らかにしてきた。これを出発点として、最近では、様々な文脈で、アクチン膜骨格が細胞膜分子の相互作用・局在・機能を制御していることが明らかにされつつある。しかし、アクチン膜骨格の生細胞での可視化には誰も成功していない。我々は最近EBP50分子が、細胞質からアクチン膜骨格と受容体の結合部位に頻繁にリクルートされてくることを見出した。本研究の目的は、この現象を利用し、(1)生細胞中でのアクチン膜骨格を可視化し、(2)シグナル変換への関与を解明し、(3)アクチン膜骨格―細胞膜結合部位の中でも、シグナル変換のホットスポットとなっている部位を同定して、シグナル変換におけるアクチン膜骨格の機能を解明する、ことである。昨年度の研究で、EBP50が、細胞質から細胞膜の細胞質側表面へとリクルートされたあと、その付近で拡散運動し、アクチン膜骨格に結合して静止する過程が観察され、このようなEBP50分子は、細胞膜とアクチン膜骨格の両方に結合したものと考えられた。本年度は、まず、EBP50が次々とやってきては一時静止するようなホットスポットが、細胞膜の内側表面に多数有ることを示した。しかし、EBP50と結合すると考えられている細胞膜上のチャネルや受容体を多数にわたって調べたが、どの分子もホットスポットにはリクルートされなかった。受容体をリガンドで刺激しても、リクルートは見られなかった。しかし、一方で、様々な受容体刺激後にホットスポット周辺で新しくアクチン重合が誘導されることが見いだされた。今後は、このようなアクチン重合のシグナル変換における機能を解明することが重要である。
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Mol. Biol. Cell
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10.1091/mbc.E15-04-0186
Nat. Chem. Biol.
10.1038/NCHEMBIO.2059