研究課題
我々は、ナルディライジン(NRDc)というメタロエンドペプチダーゼが広範な膜タンパク質の細胞外ドメインシェディングの増強因子であること、シェディング増強作用はペプチダーゼ活性に依存しないことを報告してきた。一方我々は、NRDcが核に移行し修飾特異的にヒストンH3に結合し、特定遺伝子の転写を制御することも明らかにした。興味深いことに、NRDcの転写調節活性の少なくとも一部は、ペプチダーゼ活性に依存している。これまでヒストンH3 tailのタンパク分解が転写制御に関わるという報告は散見されるが、その詳細は不明であり、個体レベルにおける意義は全くわかっていない。NRDc欠損マウスは、複数の炎症疾患モデルで顕著な炎症抵抗性を呈しており、本研究ではNRDcが転写調節因子としていかに炎症制御に関わっているか、とりわけNRDcの酵素活性が果たす役割を明らかにしたい。当該年度に、1) 個体レベルの炎症疾患モデルとして、新たに関節リウマチモデルにおいて、NRDc欠損マウスが顕著な炎症抵抗性を呈することを明らかにした。2) NRDcの転写制御における意義を明らかにするために必須である、クロマチン免疫沈降(ChIP)に使用可能な抗体を得ることに成功した。3) NRDc酵素活性の転写調節機能における役割を明らかにするために必要な野生型あるいは不活性型NRDcを再導入した細胞(NRDc-/-*WT、NRDc-/-*E>A細胞)を作製した。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究目的である、1) NRDcの酵素活性が炎症性サイトカインによる遺伝子変化に及ぼす影響を明らかにすること、2) NRDcの酵素活性がin vivoの炎症制御で果たす役割を明らかにすること、を達成するために必須な細胞(活性型、不活性型NRDc再導入細胞)、抗体などの準備は順調に進んでいる。一部の解析(遺伝子発現解析、ChIPシーケンス)においてはすでに結果が得られており、研究は順調に進んでいる。
NRDcの酵素活性が転写制御において果たす役割、その炎症制御における意義の解明を目標とし、以下に沿って研究を遂行する。1)野生型および不活性型NRDcをnull細胞に再導入した細胞を用い、炎症性サイトカインによる発現誘導が、ペプチダーゼ活性依存性にレスキューされる標的遺伝子群を抽出し、同転写調節領域におけるNRDcおよび主要転写制御因子、ヒストンアセチル化などを検討する。さらにNRDc抗体によるChIPシーケンスを行い、染色体上でNRDcが存在する領域が酵素活性に依存して変化するかを検証する。2)nullマウスが炎症抵抗性を呈した疾患モデルを用いて、不活性型NRDcノックインマウスの炎症抵抗性を検証し、ペプチダーゼ活性の炎症制御における役割を明らかにする。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 2件)
PLOS ONE
巻: 9 ページ: e98017
10.1371/journal.pone.0098017
Sci Rep
巻: 4 ページ: 5094
10.1038/srep05094.