研究課題/領域番号 |
26670140
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 孝彦 京都大学, 物質ー細胞統合システム拠点, 研究員 (40313093)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / 遺伝子治療 / 網膜 |
研究実績の概要 |
動物細胞においてゲノム上の任意の部位に特異的に変異を導入する「ジーンターゲティング法」は、これまではマウスES細胞(相同組換えが1/10~1/1000の高頻度で観察される)などの限られた細胞株でのみ適用可能であった。これは、マウスES細胞などの一部の例外を除き、一般にゲノムの相同組換えは10万分の1程度の頻度でしか起こらないからである。しかし、ここ数年、Zinc finger nuclease, TALEN, CRISPR/Cas9といったゲノム上の任意の1カ所のみを特異的に切断する「人工ヌクレアーゼ」が開発され、状況は激変した。すなわち、人工ヌクレアーゼでゲノム上の目的のサイトを特異的に切断する事により、ゲノムの相同組換え効率が飛躍的に上昇する事が示され、その有用性が注目されている。 そこで本研究では、(1)基礎データの収集を通じて「in vivo ジーンターゲティング法」の至適条件を確立し、(2)この技術を網膜変性疾患モデルマウスに応用し、遺伝性疾患の原因遺伝子の修復(遺伝子置換)技術の確立を計画した。 初年度にあたる平成26年度は、マウス・ラットの網膜や脳神経系に発現する遺伝子を幾つかピックアップし、それらの遺伝子座に緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子をノックインするためのドナーベクター、並びに、それら遺伝子座を特異的に切断するCRISPR/Cas9発現ベクターを構築した。現在までに、ピックアップした全ての遺伝子座に対し、CRISPR/Cas9依存的にGFP遺伝子をノックイン出来ることを確認済みである。今後は、ノックイン効率を更に上げるための至適条件を検討するとともに、疾患遺伝子の変異部位の修復を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した計画通りに研究は進んでいる。 当初は、対象とする遺伝子座によってGFPノックインが上手くいくものといかないものがある可能性を想定していたが、これまでのところ、ピックアップした全ての遺伝子座へのノックインに成功している。この点は当初の計画以上の進展である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、まず、ノックイン効率を更に上げるための至適条件の確立を目指す。また、網膜疾患原因遺伝子の変異部位の修復するためのドナーベクターとCRISPR/Cas9発現ベクターを構築し、網膜内で遺伝子の変異部位がゲノム編集法によって修復出来るか否かを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた遠心機(約20万円)を別の経費で購入したことと、旅費を使用しなかったために、若干の余剰金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、マウスの購入・維持費、合成DNAの購入費、DNA配列解析費に主に研究費を使う予定である。
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