研究課題/領域番号 |
26670141
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
榎本 将人 京都大学, 生命科学研究科, 特定助教 (00596174)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞競合 / がん進展 / Hippo経路 / 適応度 |
研究実績の概要 |
本研究は、がんの発生・進展を正や負に制御する重要なシステムである細胞競合を駆動する細胞の「適応度」を規定する因子を同定し、その細胞競合の動作機序を明らかにすることを目的としている。これまでに細胞競合のwinnerとしてHippo経路変異細胞であるwarts (wts) 変異細胞クローンやloserとして細胞極性遺伝子scribble (scrib) 変異細胞クローンなどが報告されている。 平成26年度は、scrib変異細胞クローンおよびwts変異細胞クローンを用いて細胞競合の適応度に関わる因子を単離・同定する遺伝学的スクリーニングを実施した。具体的には、ショウジョウバエ全ゲノムの80%以上をカバーする染色体欠失系統ライブラリーを用いて、上皮組織全体に一連の染色体欠失変異をヘテロに導入し、scrib変異細胞クローンが排除を免れて腫瘍を形成する系統や、逆にwts変異体細胞クローンの腫瘍形成を抑制する系統を複数単離した。さらに、scrib変異細胞クローンの排除およびwts変異細胞クローンの腫瘍形成を抑制した染色体欠失系統の中から特定の遺伝子同定を試みた結果、亜鉛 (Zinc) フィンガー型転写因子またはその結合分子をコードしている遺伝子が重要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに当初の計画通り、細胞競合のloserであるscrib変異細胞クローンとwinnerであるwts変異細胞クローンを用いた遺伝学的スクリーニングが完遂し、さらに複数の遺伝子を同定しつつある。一方で、同定した因子による他のloserやwinnerが引き起こす細胞競合制御やその分子機構解析については、平成27年度に計画していることから当初の計画通り順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き染色体欠失系統ライブラリーを用いて他の細胞競合の制御因子についてもその振る舞いを解析し、winnerとloserの両方向から細胞競合を駆動する「適応度」を規定している因子の分子実体を捉える。また、それらの因子が組織全体の環境をどのように変化させて細胞競合のスイッチを制御しているかを解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したことにより当初の見込み額と執行額が異なったが、研究計画に変更はなく前年度の研究費も含め当初予定通りの研究計画で進めていく。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画が概ね順調に進行していたので当初予定していた研究支援員の雇用や、研究計画上トランスジェニックフライの作製をとり止めたために26年度の研究費に未使用額が生じたが、27年度にトランスジェニックフライの作製や遺伝学的スクリーニング用にハエの維持管理のバイアルやエサを購入することで研究を実施する予定である。
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