研究課題
近年、腸上皮細胞が腸内環境を監視して腸管免疫を直接的に制御することが示唆されつつあるが、その詳細な機序についての多くは不明である。研究代表者は本研究の開始前までに独自に見出した受容体型チロシンホスファターゼSAP-1が腸上皮細胞の微絨毛に特異的に局在し、IL-10欠損によって誘導される腸炎の発症に対して抑制的に機能することを見出していた。また、SAP-1は同じく腸微絨毛に局在する膜型分子CEACAMを脱リン酸化することも見出していた。そこで本研究では腸上皮細胞に存在するSAP-1/CEACAM系が如何にして腸管免疫を制御するかにつき解析を進めた。昨年度、研究代表者は腸上皮細胞におけるCEACAMの発現が腸内細菌から放出される短鎖脂肪酸あるいは炎症性サイトカインなどにより増強することや、IL-10 KOマウスに比較してCEACAM/IL-10二重KOマウスにおいて腸炎が重篤化することを明らかにした。そこで今年度は、更なる検証を目的としてSAP-1/CEACAM/ IL-10三重KOマウスの作製を進めた。一方、昨年度中にCEACAMの細胞内領域にあるITAMのチロシンリン酸化がSrcチロシンキナーゼにより促進されることや、このチロシンリン酸化されたITAMにSH2ドメインを介してSykチロシンキナーゼが結合すること、さらにこれらの分子による細胞内シグナルがNF-kBシグナルやMAPキナーゼ経路を介してIL-8などケモカインの産生を誘導する可能性も見出していた。そこで今年度はCEACAMの細胞外ドメインの性質について詳細な解析を行った。その結果、CEACAMとSAP-1は細胞外ドメイン同士で相互作用することを見出した。以上のことから腸上皮細胞に発現するSAP-1とCEACAMは細胞外ドメインを介して相互作用しながら腸内環境を監視することで腸管免疫を制御する可能性が考えられた。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.med.kobe-u.ac.jp/tougou/signal/Home.html