研究課題/領域番号 |
26670143
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
東山 繁樹 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (60202272)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エクトドメイン・シェディング / proHB-EGF / ゆらぎ / 細胞形質転換 |
研究実績の概要 |
がん細胞形質の転換は、がん組織におけるがん細胞の多様性を生み出し、がんの治療を困難にしている。この細胞形質の多様性は、個々のタンパク質やタンパク群の産生量の確率論的な「ゆらぎ」が原因の一つと考えられる。細胞膜タンパク質の翻訳後修飾の一つであるエクトドメイン・シェディングは、膜タンパク質の細胞外領域が、プロセシング酵素によって切断され遊離する現象であり、生体内において厳密に制御され、その破綻は多くの疾患の原因となっている。このシェディング活性そのものも確率論的な「ゆらぎ」を含んでいると考えられる。シェディングの「ゆらぎ」とがん細胞の形質転換の「ゆらぎ」の相関が見出されれば、シェディングの制御による新たな抗がん治療法の開発につながる可能性がある。 近年、タンパク質産生量の確率論的な「ゆらぎ」と特にがん細胞で顕著である細胞形質転換の確率論的な「ゆらぎ」が注目されている。本研究では、タンパク質産生量と細胞形質の「ゆらぎ」をつなぐものとして、エクトドメイン・シェディングの「ゆらぎ」が関係していると仮定して、シェディングの「ゆらぎ」とがん細胞の形質転換の「ゆらぎ」に相関関係があるかを調べた。 我々はまずproHB-EGFのエクトドメイン・シェディングを蛍光イメージングによって定量可能なプローブFluhemb(Inoue et.al., J. Biochem. 2013)を安定発現するMCF-7乳癌細胞株を樹立した。次に上皮細胞様形態を示すクローンごとにシェディング活性と細胞形質との相関性を解析したところ、シェディング活性が強い細胞は上皮細胞様形態を維持する一方、弱い細胞は線維芽細胞様形態に変化することがわかった。以上の結果は、proHB-EGFのエクトドメイン・シェディングの「ゆらぎ」が癌細胞の形質転換に関係している可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずproHB-EGFのエクトドメイン・シェディングを蛍光イメージングによって定量可能なプローブFluhemb(Inoue et.al., J. Biochem. 2013)を安定発現するMCF-7乳癌細胞株を複数樹立できた。さらに、樹立した各クローンのシェディング活性と細胞形質との相関性の解析を終了し、相関性を見出すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
樹立したFluhemb安定発現MCF-7乳癌細胞株各クローンのシェディング活性と細胞形質との相関性が、当初、予測した結果とは正反対の結果を得たことから、膜型proHB-EGFと遊離型HB-EGFとが誘導する細胞内シグナルの相違が、どのようにして上皮細胞状態と繊維芽細胞状態の形態的相違を作り出すかを、シグナル分子の量的変動と、質的変動の詳細な回s系を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度計画の予備実験を26年度の終える予定で予算組を行っていたが、予備実験が26年度内に終えるのが難しくなったため、27年度へ繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
十分な予備実験を含め、27年度計画の実験を予定通り行う。
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