研究課題/領域番号 |
26670144
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
冨田 拓郎(沼賀拓郎) 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 助教 (60705060)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 血管成熟 / 細胞外マトリクス |
研究実績の概要 |
血管の形成・成熟過程においては血管構成細胞をとりまく間質組織のダイナミックな変化の存在が示唆されているが、それらが血管形成のプロセスにおいてどのように影響を与えているかは明らかにされていない。そこで本研究では、細胞を取り巻く微小な外環境においてその硬度および細胞外基質構成変化に注目した研究を行う。 平成26年度は、血管成熟に重要な役割を果たす平滑筋細胞と内皮細胞の生理機能に対する細胞外微小環境変化についての予備検討を行ってきた。細胞外微小環境による細胞の感作において、注目するポイントは、1細胞外の硬度2細胞外マトリクスの変化そして3それらを感知する分子機構の解明である。3について細胞外の微小環境変化の感知について重要な役割を果たしていると予測したのがTRPC6チャネルである。そこでTRPC6を欠損するマウスから大動脈平滑筋を単離し、まずは通常の培養環境下での細胞機能の解析を行った。それにより、TRPC6欠損平滑筋においては、増殖・分化過程において大きな変化は認められないものの、分化マーカーの一つが野生型に比べて有意に上昇していることを明らかにした。また2について細胞の接着に必要となる細胞外マトリクスを変化させた際の平滑筋の表現型変化についても解析を行った。それらと並行して、1の検討のため、硬さおよび細胞外マトリクスを変化させた培養環境の作成に取り組んだ。ハイドロゲルおよびPDMSを用いた細胞外基質の硬度を変化させた検討を行った。細胞の形態については細胞外硬度に依存した大きな変化が捕えれたが、未だ遺伝子発現レベルでの差異を認めるには至っておらず、まだ今後の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞外の硬さを変化させた培養条件の検討において、ハイドロゲルを用いた2次元培養の開発がうまくいっていない。現在、当初予定のPEGハイドロゲルの使用を一時的に休止し、PDMSを用いた培養系を用いて平滑筋および内皮細胞の細胞生理機能に与える細胞外の硬さの影響について検討を行っている。また、平滑筋細胞の表現型変化についても、細胞外硬度の変化に伴い細胞形態の違いは明らかなものの、遺伝子発現レベルでの検討では大きな変化が捕えれらていない。そのため、培養条件の設定についてさらなる検討の必要があると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
細胞外の硬さを変化させる培養環境の設定が必要な状況である。現在のところPDMSを用いた硬度変化させた培養環境では、安定的な結果が得られつつある。またTRPC6を欠損した平滑筋の解析から、血管成熟において重要なファクターの一つが絞りこむことに成功している。今後はこの分子の制御メカニズムを切り口として、細胞外環境変化が与える影響を網羅的に解析する。 また現在は、2次元での細胞培養系を中心とした解析を行っているが、3次元での培養系についての検討を平成27年度では展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内学会・国際学会参加費用として20万円を予定していたが、今年度初めに異動等が重なったため国際学会への参加を取りやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度においては、情報取集および成果発表の為、国際学会への参加を予定している。そのために平成26年度分の次年度使用額を利用する。
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