研究課題
体の組織の伸縮性を担うのは弾性線維という細胞外線維であり、老化に伴う弾性線維の劣化が皮膚のたるみ、肺気腫、動脈中膜の硬化などの直接原因となる。弾性線維のターンオーバーは非常に遅いため、弾性線維の再生はチャレンジングな課題である。これまで申請者は弾性線維の形成に必須の分泌タンパクを同定してきただけでなく、それらのうちで細胞培養に加えると弾性線維形成を強力に誘導するものを見出した。本研究では、これら弾性線維形成促進因子を組み合わせて、生体内での弾性線維再生、弾性線維を持つ培養人工皮膚・血管の作成を目指す。細胞培養で作られる細胞外マトリックスの弾性測定系開発:細胞+ECM(細胞外マトリックス)のシートを作成し、シートに載せた鉄球に磁界を加えて動かし、加えた力とレーザー計測した鉄球の変位量のグラフから弾性、粘弾性を計算できる装置を作成する。薬剤誘導性の弾性線維形成因子過剰発現マウスの解析:タモキシフェン投与によって弾性線維形成因子が過剰発現するマウスを作る。これらのマウスの肺・動脈・皮膚などの組織中のデスモシンを測定し、弾性線維の過形成がおこるかどうかを調べる。
2: おおむね順調に進展している
細胞培養で作られる細胞外マトリックスの弾性測定系開発:レーザー測距センサーと自作のコイルを用いて、加えた力と鉄球の変位量をグラフ化する装置を作成した。またヒト皮膚線維芽細胞が作るECMのシートを作成し(細胞は薬剤で殺してある)、この装置で弾性、粘弾性の測定ができるか評価を行っている。薬剤誘導性の弾性線維形成因子過剰発現マウスの解析:弾性線維形成因子2種類について、タモキシフェン投与によってそのタンパク質が過剰発現するマウスを作った。
今回作成した培養細胞外マトリックスの弾性測定装置を用いて、皮膚線維芽細胞、血管平滑筋細胞などの培養で作られるECMの力学的特性を明らかにする。ついで、これらの細胞で弾性線維形成因子をノックダウンしたときに作られるECMがどのような力学的特性の変化を来すのかを調べる。また、それぞれの弾性線維形成因子ノックアウトマウスの動脈が示す力学的特性の変化とどのように対応するかを検討する。薬剤誘導性弾性線維形成因子過剰発現マウスは、各組織の弾性線維を定量するため、デスモシン(エラスチンの架橋産物)の測定を行い、弾性線維が過剰に形成されたかどうかを検討する。また喫煙によっておこる肺気腫発症に抵抗性を示すかどうかを検討する。
購入物品のメーカーを見直すなどしたため。
遺伝子改変マウスの飼育、細胞培養用消耗品に用いる。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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