研究課題
ストレス応答性転写因子NRF2は、生体防御の鍵因子である一方、多くのがん細胞で異常に活性化し、その悪性化をもたらしている。本研究は、正常細胞におけるNRF2機能には影響せず、がん細胞で異常に活性化しているNRF2と合成致死性を示す因子の探索を目的としている。平成26年度は、スクリーニングのために、新生仔マウスの肝臓への遺伝子導入の実験系を確立した。当初予定したレンチウイルスは導入効率が予想したほど高くなかったので、アデノ随伴ウイルス接種を利用することにして、その条件検討を実施した。1 x 1011vgのAAV8を35Gの針を使用して腹腔に注射すると、肝臓に特異性高く効率よい遺伝子導入が可能であることがわかった。そこで、肝臓特異的なPten:Keap12重欠損マウスの表現型のレスキューを目指して、AAV8を用いてNRF2に対するshRNAを導入したが、ノックダウンの効率が悪かった。同様にPDK1に対するshRNAの導入を試みるも、やはりノックダウンの効率が悪かった。そこで、PI3K-AKT経路の活性化によっても不活化されないGSK3bの変異体、GSK3bS9Aを過剰発現させることでNRF2の核蓄積量を低下させて、Pten:Keap12重欠損マウスの表現型のレスキューを試みることにした。現在、GSK3bS9Aを発現するAAV8の調製が完了しており、今後、Pten:Keap12重欠損マウスに接種する。
2: おおむね順調に進展している
新生仔マウスの肝臓への遺伝子導入の実験系を確立させることができた。レンチウイルスが思いのほか導入効率が悪かったことから、遺伝子導入方法の確立に時間を要したが、スクリーニングに向けた準備が順調にすすめられているといえる。
レンチウイルスによるノックダウンライブラリーでは、あまり高い効率のノックダウンが得られない可能があり、かつ、導入効率もよくないことがわかった。そこで、CRISPR-Cas9を利用したライブラリーを利用してスクリーニングを実施することにする。それに先立ち、まず、AAV8を用いた遺伝子導入系の有効性証明するために、GSK3bS9Aの導入によりPten:Keap12重欠損マウスの表現型をレスキューすることを試みる。
マウス新生仔への遺伝子導入法の確立に予想以上の時間を要したため、初年度に購入予定であったshRNAライブラリーの購入を延期したことによる。
AAV8による遺伝子導入法が確立できたので、今後、既知の因子を数種類導入して、Pten:Keap1:Albマウスの表現型のレスキューを確認する。そこで予想通りの結果がえられるなら、CRISPRライブラリーを購入してスクリーニングを実施する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (24件) (うち招待講演 9件)
Neuro-Oncology
巻: 17 ページ: 555-565
10.1093/neuonc/nou282
Cell Metab
巻: 21 ページ: 298-310
10.1016/j.cmet.2015.01.007
Hepatology
巻: 59 ページ: 2371-2382
10.1002/hep.27020
Proc Natl Acad Sci USA
巻: 111 ページ: 7606-7611
10.1073/pnas.1321232111
Mol Cell Biol
巻: 19 ページ: 650-665
10.1111/gtc.12165