研究課題
平成26年度の研究では、申請者の研究室における実験動物飼育状況の制約等のため、当該年度後半における筋衛星細胞(SCs)特異的なRor1遺伝子ノックアウト(KO)マウスの作製以外は、主に筋芽細胞株C2C12細胞を用いたin vitro分化誘導系を用いた解析を行い、以下の成果を得た。(1)Ror1floxedマウスとPax7CreERT2/+マウスの交配により、SCs特異的なRor1KO(cKO)マウスを作製した。(2)C2C12細胞を用いた筋分化誘導系においてRor1の発現を抑制すると筋分化が促進すること、およびRor1の高発現により筋分化が抑制されることから、Ror1は筋分化を抑制することが示唆された(未発表)。(3)またIL-1β、TNF-αなどの炎症性サイトカインにより、NF-κB経路の活性化を介してRor1の発現が増加することが見出された(未発表)。(4)さらに、マウスRor1遺伝子上流のレポーター解析により、この遺伝子上流の-1~-500, -1000~-1500bpが炎症性サイトカインによるRor1の発現誘導に必要なこと、およびこれらの領域にNF-κB結合部位が存在することが見出された(未発表)。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究により、筋衛星細胞(SCs)特異的Ror1遺伝子KOマウスを作製することができた。また、C2C12細胞を用いたin vitro分化誘導系により、Ror1が筋分化を抑制することを明らかにした。さらに、炎症性サイトカインによりNF-κB経路の活性化を介してRor1の発現を誘導することを見出し、当初の目的・計画に鑑みて、SCs特異的なRor1cKOマウスを用いた解析は実施できなかったが、C2C12細胞を用いたin vitroの解析によりRor1遺伝子上流のNF-κB結合部位についての情報を得ることができ、想定以上の研究成果を挙げることができたと考えられるため、本研究は順調に進展していると判断される。また、最終年度(平成27年度)に向けた、Ror1cKOマウスを用いた予備実験を概ね完了しており、準備状況も良好であると考えている。
(今後の推進方策)平成26年度はC2C12細胞を用いたin vitro筋分化誘導系による解析を進めてきたが、最終年度(平成27年度)では平成26年度に実施することが出来なかったSCs特異的なRor1cKOマウスを用いてのカルディオトキシン(CTX)による骨格筋損傷修復モデル実験を実施し、その分子病態解析を推進することにより、in vivoでのSCsに発現するRor1の役割を明らかにするとともに、Ror1さらにはそのリガンドであるWnt5aの関与の有無についても検討することにより、その分子機構の実体を解明したいと考えている。また、平成26年度の研究によりC2C12細胞を用いたin vitro解析系からもRor1の発現誘導機構についても興味深い予備的な成果を挙げることが出来たので、今後は遺伝子発現制御機構についても詳細に検討する予定である。さらに、研究の進捗状況を踏まえて、同じRorファミリー受容体型チロシンキナーゼであるRor2の骨格筋損傷修復過程における役割についても検討する計画である。
前述のとおり、平成26年度の研究では、申請者の研究室における実験動物飼育スペースなどの制約のため、当該年度での実験動物を用いた研究は、同年度後半における筋衛星細胞(SCs)特異的なRor1遺伝子ノックアウト(KO)マウスの作製およびCTXを用いた骨格筋損傷修復モデルの予備実験にとどめた。
平成27年度では、上半期よりSCs特異的なRor1cKOマウスを用いた解析を推進するため、これらのマウスの飼育、維持、遺伝子型解析、骨格筋損傷修復モデルにおける病理組織学的・免疫化学的解析を強力に実施する必要があり、実験補助者を雇用するための経費についても重点的に使用する計画である。
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