研究課題
我々は、核小体ストレス応答を制御する新規分子PICT1を見出し、PICT1遺伝子の欠損や発現低下によって起こる核小体ストレス応答が、p53を増加させ腫瘍細胞の増殖を抑制すること、ヒト腫瘍患者の予後良好さに相関すること等を新たに見出した。このことから、核小体ストレス応答は腫瘍化進展の抑制に重要であり、このストレス応答は魅力的な抗癌治療薬の標的であると考えられた。そこで我々は、核小体ストレス応答に特異的であるRPとMDM2との結合に着目し、この分子結合を蛍光輝点として検出できるFluoppi 及び、FRETプローブを作製し、核小体ストレス応答のレポーターシステムを構築した。特にFluoppiシステムは、核小体ストレスを誘導するActDの濃度、時間に依存して蛍光輝点を計測、定量化でき、Z’-factorが0.7以上、S/B比が5以上を、CV値は0.2以下の値を再現性よく示した。このように、定量化精度に優れ、大規模スクリーニング可能なレポーターシステムを構築できたこと、Fluoppi及びFRETと異なる検出原理によるシステムが複数構築できたことから、今後薬剤スクリーニングによって核小体ストレス応答を特異的に誘導する抗癌剤の単離が期待される。
2: おおむね順調に進展している
核小体ストレス応答に特異性があり、感度、精度ともに優れたレポーターシステムが構築できた。これを用いれば、薬剤スクリーニングによって、核小体ストレス応答を誘導する抗癌剤の開発が期待できるため。
薬剤スクリーニングを実施するにあたり、まずは小規模な化合物ライブラリーを用いて、非特異的な検出が多くみられないかを確認し、スクリーニングの基礎的な条件の設定を行う。また、得られたヒット化合物を用いて、核小体ストレス応答が起こるかを生化学的に確認するとともに、抗腫瘍効果の有無を明らかにする。
本年度は、レポーターシステム構築と定量化感度、精度の検討に力点を置いたため、細胞での抗がん作用の検討や動物を用いた薬理試験を次年度以降に行うこととなり、残額が生じたため。
小規模化合物の初期スクリーニングや、個々で得られたヒット化合物を用いた細胞での効果の検討を行う。これらの効果が確認された場合は、論文発表を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
The Journal of Biological Chemistry
巻: 289 ページ: 20802-20812
10.1074/jbc.M114.571893
ONCOSCIENCE
巻: 1 ページ: 375-382
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~moloncl2/index.html