研究課題
古くから細胞分裂後に核小体が再構築されることが知られているが、その意義は多くが不明である。近年、核小体の異常により、癌抑制因子p53依存的に細胞増殖を停止させ、核小体の機能を維持する核小体ストレス応答機構が明らかになった。我々は遺伝子欠損マウスや臨床検体の解析から、この応答が、初期発生や様々な組織の機能維持に必須であること、個体の発癌や腫瘍患者の予後と相関することを明らかにしてきた。このことから、核小体ストレスへの適切な応答が、生体の恒常性維持、腫瘍化進展の抑制に極めて重要との考えに至った。我々は核小体ストレス応答の蛍光レポーターシステムを構築し、薬剤スクリーニングから、細胞分裂阻害で核小体ストレス応答が誘導されることを見出した。さらにタイムラプスイメージング解析から、分裂後の核小体の再構築を阻害すると、分裂終了後も核小体ストレス応答が強く維持された。興味深いことに分裂異常細胞は、複数の微小核を形成し、これらのうち核小体の再構築に失敗した微小核では、この応答が活性化、維持された。このような分裂異常となる細胞は、核小体ストレス応答に依存的にp53が増加し、細胞増殖が抑制された。また臨床データベース解析を行ったところ、核小体ストレス応答分子の発現が高い癌患者は、分裂阻害性の抗癌剤治療による無再発生存期間が延長した。以上より、核小体ストレス応答が、分裂後の核小体の再構築の有無によって、分裂異常細胞を除去する新たな分裂監視機構であり、特定の抗癌剤の効果を左右することが示唆され、抗癌剤の感受性や再発を予測する検査技術の開発が期待された。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Oncotarget
巻: 8 ページ: 6353-6363
10.18632/oncotarget.14087.
巻: 7 ページ: 22779-22790
10.18632/oncotarget.8059.
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~moloncl2/index.html