研究課題/領域番号 |
26670165
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
内匠 透 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, シニアチームリーダー (00222092)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / CRISPR / コピー数多型 / 染色体工学 / TALEN |
研究実績の概要 |
コピー数多型(CNV)は、ヒトの多様性のみならず、癌や精神疾患などの様々な疾患の原因と考えられ、それらの病態解明、治療法の開発のためにはCNVモデルの開発が必須である。ES細胞相同組み替えを基盤とする従来の染色体工学では、一個の作製に数年の年月を要し、網羅的CNVモデルを作製するには限界があり、技術的ブレークスルーが必要である。本研究では、TALENやCRISPR/Casといった最新のゲノム編集技術と組み替え用セレクションマーカーを組み合わせ、簡便、高速、高効率を兼ね備えた「次世代」染色体工学の確立を目指す。ゲノム編集技術による「次世代」染色体工学の開発により、CNVの作製は革新的に早くなり、網羅的ヒトCNVモデルの構築が可能になり、また将来のゲノム治療の基盤的技術となりうる。我々はこれまでにTALENと組み替え用セレクションマーカーを組み合わせた方法によりMbオーダーのゲノム欠損に成功している。本研究では、この①TALENを用いた「次世代」染色体工学の検証として、off-targetの可能性を検討する。また、TALEN法の成功に準じて、CRISPR/Casと組み替え用セレクションマーカーを組み合わせた方法により②CRISPR/Casを用いた「次世代」染色体工学の開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①TALENを用いた「次世代」染色体工学の検証 従来のCre-loxP系を利用した染色体工学的手法を用いて、あらたにヒト染色体15q25.2-25.3欠失のES細胞モデルを構築し、GTを経たキメラマウスの作製に成功していた。また、TALENと相同組み替え用セレクションマーカーを組み合わせることで、「one-step」で長い領域(480Kb)の欠失という染色体改変に成功した。本欠失作製に用いたベクターのホモロジーアームの長さは1Kbにまで短くしても、高効率に欠失変異体をえることができた。 ②CRISPR/Casを用いた「次世代」染色体工学の開発 CRISPR/Casは、細菌の適応免疫システムで、その構成因子は、Casヌクレアーゼ及びCRISPR-RNA (crRNA)、trans-activating crRNA(trancrRNAs) とよばれるnon-coding RNAsである。標的DNA領域に相補的なcrRNAが標的DNAに結合し、それを目印としたCasヌクレアーゼが標的領域を破壊する。CRISPR/Casは、非常に高効率に二重鎖切断を導入でき、また複数の変異を一度に導入できる。上記TALEN同様に、ベクターにCNV両末端をターゲットとして組み込む事でヒト染色体15q25.2-25.3の480Kb欠失をえることに成功した。CRISPRベクターと上記TALEN法の際に用いた相同組み替え用セレクションマーカーを組み合わせたものを用いて、フィーダーを必要としないmES細胞株(EBRTcH3)で効率を確認した。5’アーム、3’アームそれぞれで複数の候補選び、ES細胞に導入して、surveyorアッセイで調べた。二本鎖切断の確認できたもの、かつoff-targetの可能性が少ないものの組み合わせを用いて、ES細胞に導入し、欠失をPCRでスクリーニングし、サザンブロティング法で確認した。
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今後の研究の推進方策 |
CRISPR/Casを用いた「次世代」染色体工学を用いて作製したCNVを有するES細胞を利用して、CNVモデルマウスの作製を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞のスクリーニングに関して、当初予定していた以上に実験がうまくいき、物品費の使用が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は当初予定していた以上の実験としてマウス作製への試みに関して使用する予定である。
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