研究課題
H26年度はCRISPR法を使ってhomology directed repair (HDR)経路による両アリル遺伝子座位へのDNA組換え実験の効率化にT細胞で成功した。その標的遺伝子として、まず、HIV複製に関与するLEDGF蛋白質をコードするPSIP1遺伝子を試み、導入蛍光蛋白質の輝度の選別により効率よく組換え反応を誘導できることがわかった。そして、次にその外来遺伝子を本来の内在性遺伝子に復帰あるいは単一塩基置換させる遺伝子改修法の試みを始めた。また、ゲノム編集法を利用した HDR 組換え法により、 HIV プロウイルス特異的に LacO 反復配列を挿入する手法を確立した。そして、その細胞に GFP 融合LacIを発現させ、 蛍光顕微鏡によりGFP凝集像が見出され、すなわちHIV プロウイルスの動態追跡が可能であることをわかった。そして、ヒト血液幹細胞ならびにT細胞へ遺伝子構築を実現化する試みとして、HIV遺伝子そのものを標的とするゲノム編集技術開発を試みた。その結果、まずTALENの利用により、以前われわれが報告したCRISPR法(Sci Rep 3:2510, 2013)よりも、遺伝子除去効率がきわめて優れていることがわかった。また、CRISPR法によりHIV蛋白質をコードする座位を標的として、HIVの複製を抑制しうる独自のレンチウイルスベクターを開発した。以上の結果から、遺伝子改修法としてゲノム編集法が応用できることがわかってきた。具体的に血液細胞、特に血液幹細胞への遺伝子治療法の施行が可能な技術の展開が今後の課題である。
2: おおむね順調に進展している
ゲノム編集法が開発されて、これまで困難であった特定遺伝子座位へのノックインならびに遺伝子の改修など、次々と研究成果が報告されており、その研究進展のスピードは早い。きわめて競争の激しい研究領域である。本年度は、T細胞のHIV関連分子の遺伝子両アリル座へのノックイン法とウイルス学的解析法の開発に成功しており、その達成度は高い。
ZFN法、TALEN法、CRISPR法などのDNA配列特異的切断酵素を利用したゲノム編集技術は、近年急速に進歩している。そして、本研究課題として提案した血液幹細胞へのコモンガンマ鎖遺伝子座位への遺伝子導入研究に、ZFNを使った成功例が本研究開始後に報告された(Nature 510:235-240, 2014)。そこで、治療標的遺伝子座位の両アリルに効率的に外来遺伝子をノックインする研究に計画を変更した。そして、その外来遺伝子の除去、そして、本来の遺伝子の改修技術の開発に推進方針を変更した。また、血液幹細胞へのゲノム編集システムの導入法については、申請者がもっとも得意とするレンチウイルスベクターによる方法をまず採用した。しかし、他の方法を試みるべきと考えており、現在実験を進めている。具体的にはナノテクノロジーの応用であり、その研究領域の国際的広がりから考えて海外の研究者との共同研究を開始した。
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PLOS One
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http://www.virus.kyoto-u.ac.jp/Lab/KoyanagiHP/
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