研究課題
ヒストンH3K36メチル化酵素遺伝子NSD1の変異で発症するソトス症候群(SoS)について、遺伝子変異とDNAメチル化への影響を調べるため、ゲノム中のインプリンティング関連DNAメチル化可変領域(DMR)のメチル化状態を解析したところ、複数のDMRの低メチル化を認めた。今年度は、昨年度に引き続きDMR-XとDMR-Yに絞って解析を進めた。培養細胞を5-Aza-2’-deoxycitidne(5-aza-CdR)で処理し、脱メチル化させ、遺伝子発現を定量的に解析した。昨年度はHEK293を用いたが、解析対象遺伝子の発現プロファイルを考慮し、今年度はヒトtrophoblast由来TCL-1とHTR8を用いた。5-aza-CdR処理により、DMR-Xの脱メチル化に伴い遺伝子Aの発現が5-6倍上昇し、DMR-Yの脱メチル化に伴い、遺伝子Bの発現が数百倍、遺伝子Cの発現が数十倍上昇した。これらの遺伝子の発現上昇は、SoS の症状を説明可能であることから、SoSではNSD1変異によりDMRのDNAメチル化が低下し、DMRに制御されている遺伝子発現が上昇することで症状が惹起されることが示唆された。一方、HEK293でNSD1をノックダウンし、DMR-Xのメチル化と標的遺伝子Aの発現を解析する実験も行った。しかし、DMRのメチル化は変わらず、遺伝子Aの発現量も変わらなかった。このことは、NSD1によるH3K36meは、DMR確立後の分化細胞におけるDNAメチル化維持より、発生初期のDMR確立そのものに重要な役割を果たしていることを示唆する。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
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