研究課題
非翻訳領域リピート伸長変異は、翻訳領域リピート伸長に比べ遥かに大きく、その不安定性も極めて強く、リピート長(遺伝子型)と表現型の相関も弱く、その病態は複雑でその解明も不十分である。脆弱X 症候群(FXS)は知的障害や自閉症などの症状をもち、原因遺伝子( FMR1 ) の 5'UTR領域のCGGリピート伸長(>200リピート)で発症するが、脆弱X 随伴振戦/失調症候群(FXTAS)は、FXS の保因者(CGGリピート数55~ 200)に発症する疾患で、50歳以降に振戦や失調などの症状を呈し、パーキンソン病、 神経核内封入体病などとの鑑別が必要な疾患である。本研究では、FXTASのリピート不安定解析を行い、その複雑な病態解明とともに、合理的な分子標的治療戦略の確立を目的とした。FXTASの1剖検例(Ishii K, et al. Internal Med 2010)を用いて、各体細胞組織のCGGリピート不安定性を検討した。各組織からDNAを抽出し、新たなPCR法で、神経組織間、非神経組織間、同一組織のがん・正常組織間のリピート不安定性を解析した。神経組織間(脊髄84~中脳91リピート)、非神経組織間(食道79,~直腸95)、膵臓のがん組織と正常組織間にリピート不安定性が認められた。FMR1 CGGリピート不安定性にミスマッチ修復遺伝子の発現レベルが関与しているとの知見が最近出てきており、DNA抽出組織からそれぞれ同時に抽出したRNAとタンパクを用いて、各組織のミスマッチ修復遺伝子群の発現をリアルタイムPCR、ウエスタンブロット法で解析し、リピート不安定との関連を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
概ね順調に推移し、成果を上げている。各組織のリピート不安定性を、それぞれのミスマッチ修復遺伝子の発現レベルとの関連で検討を進めている。
各組織のミスマッチ修復遺伝子の発現レベルと、体細胞モザイク・リピート不安定性との関連について検討中であり、リピート不安手性を制御する因子を同定することによって、将来の治療介入を目指す。
脆弱X 随伴振戦/失調症候群(FXTAS)のCGGリピート不安定性解析に取り組んでいたが、バイオアナライザーとキャピラリーシークエンサーの異なる手法で得られた結果に相違が生じた。その結果、両手法の比較検討に多大な時間を要した。。
解析法の相違による結果の違いについて、バイオアナライザー法が正確であることが判明し、解析を進展させる。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
PLoS Genet
巻: 11 ページ: e1004834
10.1371/journal.pgen.1004834. eCollection 2015 Jan.