研究課題
DNA2次構造の解析は、ゲノム配列情報に付加的機能を媒介する新しいエピゲノムとして重要である。G-quadruplex (G4)と呼ばれる四重鎖DNAもそのひとつであり、転写、複製、組換えの調節に関係するといわれている。胎盤性抗凝固因子ANXA5遺伝子のプロモーター領域には習慣流産と関連する多型が存在するが、この多型はプロモーター領域にあるG4のコンセンサス配列を変化させる。従って、この多型が四重鎖DNAのできやすさに影響し、ANXA5の発現量が変化した結果としておこる胎盤での凝固亢進状態が習慣流産の原因であるという仮説が成り立つ。本研究では、2年間で、ANXA5のプロモーター多型と四重鎖DNA、遺伝子の発現量との関連を統合的に検討することで、習慣流産の原因を解明しようとするものである。本年度は、生体内で実際にG4構造をとっていることを証明するために、抽出したゲノムDNAに対し、熱変性をさせないでバイサルファイト法をおこない、変換される塩基の割合を調べた。その結果、ANXA5遺伝子のプロモーター領域は、他の場所と比較して、変換率が高かった。この結果から、ANXA5遺伝子のプロモーター領域は、生体内で1本鎖などの2次構造をとっている可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
研究計画では多くをin vitroでの2次構造を証明することに費やす予定であったが、生体内での2次構造を証明することにバイサルファイト法が応用できるという新たな試みが成功し、期待通りの結果が出た。
バイサルファイト法によって、ANXA5遺伝子のプロモーター領域の多型、とくに習慣流産と関係があり、アネキシンVの発現を低下させるM2ハプロタイプと、野生型ハプロタイプとの間に、グアニン四重鎖構造のとりやすさに差があるのかどうかを検討したい。ANXA5遺伝子のプロモーター領域の2次構造がANXA5遺伝子の発現を調節しているとした場合、おそらく、2次構造は空間的、時間的制御を受けていると予想される。実際に、組織としてゲノムDNAを抽出した時に、実際にANXA5遺伝子が発現するという作業をしている細胞を含む割合が小さい場合は、期待している、多型によるグアニン四重鎖構造のとりやすさの違いを検出するのは難しいかもしれない。細胞種によって分画してから検討する必要があるかもしれない。
研究計画の変更により、in vitroでのグアニン四重鎖の証明ではなく、in vivoでの証明を中心に解析を行った。そのため、パイロット的な実験が多くなったため。
in vivoでのグアニン四重鎖の証明を中心に解析を進めていくが、同じバイサルファイト法を用いて、種々の細胞や組織、種々の条件によって検討を進める。また、in vivoでの1本鎖DNAを証明する別の実験系を試行してゆく(薬物による切断など)。
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