研究課題
本研究は、ヒトの血液サンプルに含まれるステロイド前駆体濃度を新たな指標とした血液検査によって、これまで原因不明のヒトの原発性アルドステロン症の原因酵素を割り出そうとする試みである。我々は、独自のモデルマウスを用いた研究から、アルドステロン合成の中間段階を触媒する酵素(3β-HSD)の異常が過剰なアルドステロン産生を導く直接の原因となることを見出し(Doi et al, Nat Med 2010)、実際にこの酵素がヒトの原発性アルドステロン症の病変部においても過剰に発現することを明らかにした(Doi et al, J Clin Endocrinol Metab 2014)。そこで、ヒトでもこの酵素が本症の原因となっていることを調べるため、我々は、原発性アルドステロン症患者の副腎静脈血サンプル中に含まれるステロイド前駆体濃度を測定し、3β-HSD酵素活性値を見積もった。その結果、今回我々が調査した患者検体すべてにおいて、患部側の酵素活性値が健側に比べて異常に高くなっていることがわかった。この結果は、マウスと同様、ヒトでも3β-HSDの異常な酵素活性の亢進が原発性アルドステロン症の重要な原因の1つとなっていることを示唆している。また我々はさらなる臨床を見据え、今回明らかにしたヒトの原発性アルドステロン症の原因酵素HSD3B1に関し、その発現様式を調べた結果、本酵素遺伝子はサーカディアンクロックのみならず、血圧の重要な制御ホルモンであるアンジオテンシンⅡによっても核内受容体NGFIBを介して制御されることを見出した(Ota, Doi et al, Mol Cell Biol, 2014)。これらの結果は、3β-HSDの動的な制御によってアルドステロンの合成速度が制御されていることを示しており、その制御の異常が原発性アルドステロン症の発症につながる可能性を示唆している。
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