研究課題
細胞外に分泌されエクソソームは、癌・間質相互作用、増殖・浸潤、血管新生、EMTを制御している。一方、ヒトゲノムには超保存領域 (T-UCR)から転写される非翻訳RNA(ncRNA)がエクソソーム内にも存在することが想定されている。本年度は、胃癌・前立腺癌におけるエクソソーム内に存在するT-UCR-ncRNAの発現とその機能を明らかにした上で、T-UCR-ncRNAを標的とした診断・治療への展開を目的とし、以下の通り研究を実施した。1.胃癌・前立腺癌におけるエクソソームの調整胃癌細胞株について、超遠心法によりエクソソームを準備した。エクソソームの確認は、CD63にて行なった。さらに、エクソソーム膜に存在するtetraspanin 8のsiRNAノックダウンによっても確認した。2.特徴的T-UCR-ncRNAの発現解析と機能解析胃癌および前立腺癌におけるT-UCRの発現とメチル化による制御、癌に特徴的に発現亢進を示すT-UCRの同定とその発現制御並びに下流遺伝子の探索を行なった。代表的T-UCRの発現を胃癌細胞株・前立腺癌細胞株およびそれぞれの正常組織とで比較したところ、胃癌・前立腺癌ともに癌で発現低下を示すT-UCR(Uc.118+A, Uc.158+A, Uc.241+A, Uc.244+, Uc.249+,等)の多いことが分かった。その内、Uc.158+Aでは転写調節領域が癌において高頻度にメチル化されており、ルシフェラーゼアッセイによってメチル化による転写活性低下が確認された。一方、癌で発現亢進していた3種のT-UCRの内、Uc.416+Aでは臨床検体においても癌における発現亢進が確認された。生物学的機能解析では、siRNAによるノックダウンにより細胞増殖能が有意に抑制された。Uc.416+Aの発現制御機構、下流の標的遺伝子に関する検討を行なっている。
2: おおむね順調に進展している
本年度の計画通り、胃癌細胞株についてエクソソームの調整を行なうことができた。手法が確立されたため、前立腺癌細胞株および組織サンプルについても順次滞りなく調整することができる。また、代表的なT-UCRの発現解析では、癌細胞株と正常組織との比較で抽出した発現異常を示すT-UCRについて、臨床サンプルに対する定量的RT-PCRにより、いくつかのT-UCRでは発現異常が確認できた。機能解析に関しても、組織サンプルにおける発現と臨床病理学的事項との相関解析に加え、MTTアッセイ、invasionアッセイを行い、T-UCRの生物学的特性制御に関する知見を得ることができた。
当初の計画に従って研究を推進する予定である。即ち、T-UCR-ncRNAとmiRNAの発現相関解析とその制御に関わるmiRNAの同定と転写活性の検証、特徴的T-UCR-ncRNAと臨床病理学的事項・治療情報との関連解析、Liquid biopsy診断系の確立ならびにsiRNA等による治療実験、等である。技術的、設備的には問題なく遂行することができる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
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