研究実績の概要 |
超保存領域 (T-UCR)から転写される非翻訳RNAはエクソソーム内にも存在することが想定されている。本研究は、胃癌・前立腺癌におけるT-UCR-ncRNAの発現と機能解析、T-UCR-ncRNAを標的とした診断・治療への展開を目的とし、特に最終年度である本年度は以下の通り実施した。 1. 胃癌・前立腺癌に特徴的T-UCR-ncRNAのmicroRNAによる発現制御:特に胃癌で発現亢進し、細胞増殖に関わるUc.416+Aでは、UCbaseとmiRbaseの検索で、miR-153と相補的配列を有することを見いだした。miR-153の強制発現でUc.416+Aの発現および転写活性の抑制が確認された。胃癌臨床検体においても、U.416+AとmiR-153の発現は有意な逆相関を示した。前立腺癌細胞株でも同様の結果が得られた。 2. 特徴的T-UCR-ncRNA, Uc.416+Aの下流標的遺伝子の探索:胃癌細胞株においてUc.416+AをsiRNAでノックダウンし、発現変動を示す遺伝子をGeneChipで網羅的に検索した。その結果、IGFBP1, IGFBP6の発現上昇、ADH1C, HOXB5, HOXB6の発現低下が認められ、定量的RT-PCRでも確認されたた。臨床検体においては、胃癌組織でのIGFBP6の発現低下、HOXB5, HOXB6の発現上昇を認めた。 3. 特徴的T-UCR-ncRNA, Uc.416+Aの細胞外分泌と癌患者血清における検出:培養上清あるいは血清からTotal RNAを抽出、RT-PCR法にてT-UCRを検出した。胃癌細胞株MKN-1、MKN-45、MKN-74、前立腺癌細胞株DU145の培養上清からUc.416+Aの分泌を確認した。血清でもUc.416+Aの検出は可能であり、前立腺癌患者で高い傾向にあった。
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