研究課題/領域番号 |
26670176
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
北澤 荘平 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90186239)
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研究分担者 |
北澤 理子 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (00273780)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エピジェネティク / メチル化シトシン / 組織化学 |
研究実績の概要 |
現在、申請者等は、対象とするメチル化シトシンを有するDNAと、標識DNAプローブとが二本鎖DNAを形成したときに想定される立体構造に着目して、部位特異的DNAメチル化に対してメチル化シトシンとオスミウム酸により、錯体形成をするbipyridine-adenine標識プローブ (ICONプローブ)を最適な標識物質として設計し、プローブ結合後のin situ DNA増幅反応(Padlockプローブ法)を用いて、ICONプローブに付加した増幅用塩基配列に対して、相補性配列を持つPadlockプローブを作成し、70℃前後でDNAの結合反応を行った。これらの反応を染色体、細胞・組織標本上で行い、この方法は、現時点で単一遺伝子検出を行えるだけの感度を有しており、形態を保ったままDNA増幅が可能であるが、ガラススライド上での反応で良好な結果を得ている。二重色素を用いた反応でも分別することが出来、多重染色が可能なレベルになっている。 培養細胞を用いた予検討を行い、in situ hybridizationに用いる細胞の固定条件を決定するために、種々の固定液、固定時間、固定後処理について検討している。最終的には、病理組織の固定に最も汎用されている10%ホルマリン固定、パラフィン包埋検体を用いた検出が可能となる条件を決定できるように至適化を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロアレイ用のガラススライドの導入により、背景の余計な染色性をおさえることが出来、目的の検討実験が極めてスムーズに行く様になった。このため、当初の計画遂行は順調に推移し、この研究は、各種学会でのシンポジウム演題として発表するに至っている。 申請者等の教室では、長年にわたる分子雑種法の経験と施設を有しており、また平成18年度、基盤研究(B)にて導入したHybridizerを有効に活用することで、厳密な条件設定が可能なことも研究を推進させている。Padlock法により合成過程でDNAを標式する物質 (ジゴキシゲニンの予定)に対する抗体を併用し、更なる感度の向上を図り、単一遺伝子の検出を行う段階に到達した。
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今後の研究の推進方策 |
組織を用いたFISH法によるメチル化シトシン検出法の確立:細胞レベルでの予検討を元に、パラフィン切片を用いた組織への展開を行う。通常のDNAを標的としたin situ hybridization法では、単一遺伝子の検出を蛍光物質によるFISH法で行うことが可能であり、現在このFISHのシステムは汎用化されつつある。メチル化シトシンを標的としたin situ hybridizationにおいても、このFISH法を用いた検出方法の確立を目指す。 最終的には、病理組織の固定に最も汎用されている10%ホルマリン固定、パラフィン包埋検体を用いた検出が可能となる条件を決定することを目指す。メチル化シトシンは、これまでの私どもの検討 (Lab Invest 2000, JBMR 2001, Cancer Science 2004)では、包埋後10余年を経過しても安定な状態で保存されており、過去に蓄積されてきた病理組織標本を用いた後向き解析が可能であることが予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
前半期には、標的のメチル化シトシンに対してオスミウム錯体を形成し、標的DNA との間にクロスリンク体を形成するICONプローブを中心に、メチル化部位特異的なプライマー設計と、組織切片・染色体標本上でのin situ DNA増幅法 (Padlockプローブ法)の条件最適化を重点的に行ったことにより、従来の研究試薬や機器の共有が可能で有ったため、経費を節約することが可能で有った。
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次年度使用額の使用計画 |
再生過程におけるエピジェネティクス制御機構のre-programming現象の詳細、発生過程における遺伝子刷り込み現象や組織・器官形成の多様性とメチル化との関連、さらには癌をはじめとする種々の病理病態におけるエピジェネティクス制御機構の破綻についての解析など、広い範囲の研究、診断、臨床医学に対して、分野横断的に展開させるために、多くの試料処理が発生することが予想され、繰り越した研究費を有効利用することでそれに対応する予定である。
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