研究課題/領域番号 |
26670177
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中川 和憲 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50217668)
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研究分担者 |
鬼丸 満穂 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00380626)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 血管リモデリング / 動脈硬化 / 終末糖化産物 / Dアスパラギン酸 / 石灰化 |
研究実績の概要 |
前粥腫病変から臨床的にも問題となる粥腫病変(アテローマ)に至る進行・進展機転について、剖検症例を用いて酵素によらない生体化学反応産物の局在様式を解析した。硬化の進行病変を脂質プール主体病変、石灰化病変、壊死巣を有するものに分類し、ラセミ変換アミノ酸であるDアスパラギン酸(D-Asp)、および終末糖化産物(AGEs)として、カルボキシメチルリジン、カルボキシメチルアルギニン、カルボキシエチルリジン、GA-ピリジン、AGE-3、3DGイミダゾロン、ペントシジン修飾の局在を検討した。 D-Aspは、初期病変では陰性であり、粥腫病変の脂質プール内の細胞外基質や脂質プール外では病巣底部に斑状に陽性を認めた。一方、こうした所見は石灰化病変の有無とは、相関なく、ラセミ変換によるタンパクの荷電や構造変化によるカルシウム沈着への影響はないものと推測された。なお本年度のD-Aspの所見については、一部に血清に由来するバックグランドの影響も想定されるが、これを考慮しても、非細胞的反応による物性変化が、進展病変での何らかの役割担う可能性は示唆された。一方AGEsは、進行病変の石灰化部分に一致して認められ、硬化内膜での糖化修飾産物の蓄積は、病変の石灰沈着への運命付けに大きく関わることが示唆された。ただし、フォンコッサ染色によるカルシウム沈着の検出には、微小病変部での一部不一致も観察され、糖化修飾が石灰化沈着に先立って起こる「発症要因」なのか、進展を亢進させる「促進要因」なのかについての結論には至っていない。なお、D-Asp、AGEsといった構造変化や化学修飾は、その染色パターンから膠原繊維を主体とする可能性が高く、膠原繊維は代謝の半減期の長いタンパクとして知られるため、長期にわたる修飾の蓄積とその様式が進展病変の転帰に影響しうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
・抗Dアスパラギン酸抗体を用いた動脈硬化進展病変の検出にあたり、当初解析に使用していた抗体の血清への非特異的反応が想定されたため、人体には存在しないヘモシアニンのDアスパラギン・コンジュゲートを抗原にした抗体による再解析を行っている。 ・終末糖化産物(AGE)の検出に関しては、想定される主な修飾体に対する抗体の染色条件の決定を終え、パラフィン標本の解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
蓄積している剖検パラフィン標本の症例数を増やし、データの信頼性を増すほか、抗体の非特異性反応の検証を複数抗体のクローンを用い排除を図る。これに加え、加温による解析への影響を想定し、凍結切片での追証を行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(未使用額が発生した状況)動脈硬化内膜での成分の化学修飾の局在態様を検討してきたが、特異性の検証過程で、結果に血漿成分に対する非特異的反応が含まれることが判明したことから、計画の延長を申請し別の抗体での追検証を行うこととしたため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
(次年度における未使用額の使途内容)次年度に別クローンの購入及び新規抗体の調整を計画の上、免疫組織化学的解析を行うこととし、未使用額はその関連経費に充てる。
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