研究課題
濾胞ヘルパーT(Tfh)細胞には血液中に遷移サブセットが存在し(Tfh細胞遷移サブセット;Tfh1細胞、Tfh2細胞、Tfh17細胞)、Tfh細胞ならびにTfh細胞遷移サブセットの制御機構の解明は免疫関連疾患の病態解明につながる。よって本研究では、 Tfh細胞の新規遷移マーカーの同定と免疫病理診断法の開発を目的とした。この度の研究によって、我々は臨床医学的あるいは基礎医学的な事実を捉えることができた。すなわち患者血液検体を用いた研究により、免疫アレルギー疾患において Tfh細胞遷移サブセットの特徴的な分化偏倚が見出された(Clin Immunol 2015)。さらにT細胞抗原受容体刺激下でのTfh細胞の数的調節をBob1転写制御因子が担っていることを明らかにした(Eur J Immunol 2016)。組織中のTfh細胞は遷移Tfh細胞への中継ハブと考えられるが、Tfh細胞の代表的分化マーカーであるBcl6に加えBob1もその他のエフェクターTh細胞(Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞)に発現していないため、いずれもTfh細胞特異的な機能遷移マーカーとして位置づけられる。こうした事実に基づき、免疫病理学的に数多く認められるナイーブヘルパーT(Th0)細胞に着目して、Tfh2優位な免疫アレルギー症例と健常人の Th0細胞遺伝子発現プロファイルを比較した結果、ユニークな遺伝子クラスターが見出された。これらをTh0内在性のTfh2過偏倚に関わる遺伝子群と位置付け解析しており、ARSDやPOLRMTなどが候補となっている。免疫組織で数多く存在するTh0細胞に着目した本研究のさらなる推進により、新たな免疫病理診断法の開発や免疫関連疾患の病態解明に向けてこれまでにない展開が期待される。
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