研究実績の概要 |
集学的治療法の進歩により,骨腫瘍の治療は飛躍的に進歩している.しかし,依然として遠隔転移例の予後は不良であり,手術・放射線療法を含めた局所療法に加えて遠隔転移の制御法の開発は極めて骨・軟部腫瘍の治療戦略上極めて重要なテーマである.高転移株を樹立しその生物学的特性を解析する方法は,各種悪性腫瘍で古くから行われてきた研究手法であり,本研究では高肺転移骨肉腫(LMOSi3)および軟骨肉腫(LMCSi4)細胞株で過剰発現するlincRNAに注目し、骨・軟骨悪性腫瘍の肺転移に係るlincRNA(lincRNA-ARF6)の生物学的役割を明らかにする。研究期間内に以下の解析を行った.1.lincRNA-ARF6の発現抑制による、ARF6の発現変動の検証.2.lincRNA-ARF6とcomplexを作る抑制蛋白群の同定.3.細胞運動能、浸潤転移能に係る分子機構の解析.4.SCIDマウスxenograftでのlincRNA-ARF6発現制御系による転移抑制実験. lincRNA-ARF6 inducibleを作成し、ARF6の発現変動が抑制される事を確認した.lincRNA-ARF6とcomplexを作る抑制蛋白群ではポリコーム蛋白であるPC2が結合していた.lincRNA-ARF6はepigeneticsの制御機構を介して高肺転移株の特性形成に関与している可能性が示された.NGS解析によりにinducible cloneを用いた細胞接着,運動能,EMTに係る遺伝子を同定した(8高発現,3低発現).これらの遺伝子を遺伝子工学的に発現制御する事で, in vitroでのLMOSi3,LMCSi4の浸潤転移能は抑制された.しかし,xenograftでの転移抑制には失敗した.
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