研究実績の概要 |
胃癌の発癌、進行にクロマチンリモデリング因子がどのように関与しているかを明らかにするため、手術材料で発現状態を検索し、臨床病理学的因子との比較を行った。胃癌や他の癌でも報告があるARIDを中心に検索を進めた。 850例の胃癌ティシューアレイの検索の結果。ARID1Aの低下は20%、ARID1Bは10%、ARID2は15%であり、胃腺腫でも胃癌ほどではないが、低下していた。胃癌の中でも進行に伴う発現低下がみられた。腸上皮化生や胃炎ではARIDの発現低下は見られなかった。さらに、予後との比較を行ったが、ARID1Aは予後と有意な関連が見られたが、ARID1B, 2は予後と関連は明らかではなかった。 他のクロマチンリモデリング因子では、BRG1, PB1, SMARCC1, MLLを検索し、いずれも胃癌での発現低下が見られたが、癌の進行との関係は明らかではなかった。ARIDにくらべると、発現低下の割合が少なく、発癌や進行への関与は小さいと考えられた。hMLH1, p53に続いて、新たにmiR-21との発現を検索したが、関連はなかった。EBV感染との関連は終了していたが、さらにMUC2, 5AC, 6をマーカーとした粘液形質との関連を検索した。胃癌と同様に進行度を分類しやすい、膀胱癌での検索を追加したが、同様に進行にともなう低下傾向を認めた。 培養細胞ではsiRNAによる発現抑制を用いて、胃癌細胞株AGS, MKN74, NUGC3, MKN7の変化を観察した。ARIDの発現を低下させることで、96時間までの観察では、増殖率、アポトーシス、浸潤能、移動能の変化は明らかでなかった。5AzaCによる脱メチル化によって、ARIDの発現が増加し、ARIDの発現コントロールにメチル化が関係していると考えられた。脱メチル化による細胞増殖などの変化は明らかではなかった。
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